視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
松島税務会計事務所所長 松島 宏明さん(桐生市相生町)

【略歴】明治大卒。1985年に桐生へ戻り、10年前に会計事務所所長に就任。桐生JC理事長、県小中学校PTA連合会長、生涯学習桐生市民の会会長などを歴任。現在は桐生市教育委員を務める。

問題解決策


◎「逃げない勇気」が大切

 ここのところ、経済・社会の状況はどこかおかしいのではないか、と思えてなりません。例えば、アメリカでのエンロンやワールドコムの紛飾決算事件。わが国ではBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)や食品会社の表示の問題、原子力発電所でひび割れを隠していた問題と、さまざまな問題が次々に表面化してきました。

 そういった問題に共通する要素は何かと考えてみると、それぞれのところでウソがあるということではないでしょうか。ある意味そのウソは、今まで何となくまかり通っていたものであり、そういった社会の仕組みが、どうやら制度疲労を起こしてきたのではないかと思います。

 身近なところで、私自身税理士という仕事柄もあり、中小企業をはじめとした企業倒産や、個人の自己破産の増加は気になります。おそらくは、原因のかなりの部分にそのウソがあるのではないかと考えてしまいます。

 また、ここ何年かPTA活動に携わってきて、子どもたちの世界にも、大人と同じようにある種のウソがあるのではないかと考え続けてきました。例えば、好きな先生から言われることには、本当は納得していなくても素直に従い、逆に嫌いな先生から言われたことには、正しいと思っていてもそっぽを向くといったようなことから、それがもし、目指す進路に望まれる姿をつくり出そうとする無理なチューニングとなった時、そのまま自分自身にウソをつくこととなり、結果として自分を失って、未来に夢を描けなくなったりするケースは十分考えられます。

 またそのことは、友達同士でも同じように起こってくるはずです。いじめや不登校のような問題の根は、案外そのへんにあったりして。

 そうなってくると、教育制度の改革に盛り込まれたプログラムの変更も、週五日制も、そういった問題の本質からは少し遠いということになります。

 大人の社会も、子どもの社会も、見え隠れする問題の本質をもう一度見つめ直したとき、初めて新しいスタートが切れるのではないでしょうか。その問題に立ち向かうために、現代の私たちが忘れかけているものは、『逃げない勇気』ということになるでしょう。正しいことは正しいといい、間違っていることは間違っているという、単純な判断から逃げない勇気が大切だと思うのです。もちろんこれは、大人であろうと子どもであろうと変わりありません。

 きっとこれからも、今までには考えられなかったような問題が起こってくることでしょう。未知の問題に直面するたびに、半歩ずつ引き下がるのではなく、問題に向かっていく勇気を持つべきでしょう。いずれ時代のバトンは、われわれの子どもたちの世代が受け取り、走らなくてはなりません。その時に、ひどい社会やひどい時代にしてくれたものだ、と思ってもらいたくはないはずです。

(上毛新聞 2002年11月23日掲載)