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◎人権侵害被る“日本人” ブラジルってどこにあるの? 地球儀を見てみると、ちょうど日本の裏側にあります。 ブラジル人は、大泉町に四千七百四十四人、伊勢崎市に三千二百五十人、太田市に三千四百四十七人が登録されています(十月一日現在)。 太田市は、平成十一年三月に「人権に関する市民の意識調査」をとりまとめました。それによると、身近にある人権問題の中で、外国人に対する人権侵害が48%と一番多いことにビックリしました。 これをきっかけに、日系ブラジル人を支援するために「九合NPOヴェルジの会」を十一年十月に組織。現在七人の会員で、日系ブラジル人親子が太田市で楽しく暮らすためのサポート活動をしています。具体的には、ブラジル人学校・パラレロの日本語授業のサポートや、制服・辞書などの提供です。 日本語授業のサポートは毎月水曜日の午前中に会員が交代で行い、主にひらがなや漢字の書き方の指導をしています。生徒は幼稚園から小学校六年生までの三クラス。日本語はほとんどの生徒が話せますが、書くことはできません。この学校は日本に定住する可能性の高い生徒が多く、私たちのやりがいもあります。 授業時間は一時限が四十五分で、二時限と三時限の間には休憩があります。この休憩の時にみんな、ジュースやお菓子を食べます。これは恐らく朝食を取らないためにおなかがすいてしまうのだと思われます。以前にブラジルでは朝食を取らず、一日二食の食生活だと聞きました。また、生徒数は以前の半分の百三十人くらいに激減。親の仕事の都合でブラジルへ帰国したり、他県への転出などが原因だそうです。日本の不況は、ここに一番早く現れるようです。 制服や辞書の提供は、経済面からの支援を目的としています。不要になっている物をリサイクルして役立てることは、これからの日本にとって大切なこと。 また、生活面の支援はこれからの課題ですが、新会員を多く募集して取り組みたいですね。私たちは外国人の人権、特に日系人の人権にスポットを当て活動しています。日系ブラジル人はブラジルでは他国出身者より優遇されていないようで、また先祖の祖国に居住すると、外国人として差別を受けています。われわれは外国人を見ると一歩引いてしまい、その人を理解することを避けてしまうのではないでしょうか。日系人は字の通り、日本人を先祖にした人たちですから、元をただせば日本人ということです。今から八十年前を思い返せば明らかですね。現在、日系ブラジル人は工業生産を支え、日本の若者が嫌う三Kの労働者です。しかし、これから八十年たつと、彼らの子孫は立派な日本人となります。ですから、今から誠実に彼らと向き合っていく必要があるのです。 このことは、他の外国人にも共通した、理解向上につながる重要な考え方になると思います。人権とは、などと大きく構えないで、身近な、手の出しやすいところから私たちのように取り組んでみましょう。 (上毛新聞 2002年11月12日掲載) |