視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎縄張り意識から脱却を 前回(十月三日付)に続いて私事になるが、脳内出血で意識を失ったとき、救急車を手配してダウン症の三男を連れて病院へ行き、帰宅後に夕食をとらせて寝かせつけ、入院中も身の回りなどの世話を主にしたのは、高校生の二男であった。 もしものときにどうすればよいかを教えておかなければならなかった親の責任ではあるが、こんなときに病院に福祉のカウンセラーがいれば、障害児のショートステイという制度があることを二男に伝え、また手配することができたのにと思う。 生まれた子どもに障害がある場合に医療と保健との連携がとりわけ必須であることは以前にもふれたが、障害のあるなしにかかわらず、家族一人が病気になると、退院後の看護、アフターケアも含めて、いろいろな問題が生じる。 病院にいると、よく目につくのが「老・老看護」である。看護をされている高齢者は要介護認定1や認定を受けられない場合がほとんどのようであるが、そのためホームヘルプサービスを受けることがほとんどできず、看護疲れで共倒れになるおそれが多分にある。 それでも、高齢者に対しては、連絡をすれば社会福祉協議会が家庭を訪問して介護の認定から手続きまでを行っているが、高齢になると連絡の取り方がわからなかったり、自分から連絡を取らない方なども出てくる。そのためにも、病院には介護の専門家や相談員の定期的な巡回が必要だろう。 また、病気・事故による長期療養や重い後遺障害などが残った場合には、回復訓練を含めて介護・福祉・年金などの手続きが必要になるが、入退院時には精神的・肉体的な余裕はなく、また、まさかと思っているのがほとんどなので、そのような知識も乏しい。これらの場合にも利用者の立場に立った専門知識のある相談員が必要だろう。さらに欲をいえば、ちょっと手伝いがほしい場合のボランティアサービスの連絡先なども調べられるとありがたい。 医療・看護・保健・福祉・介護それぞれは以前に比べて一定の進展がみられるが、それらは互いに連携してこそではないだろうか。そしてこれらをコーディネートするのが行政の役割だと思う。 過日、治療で入院するために三男のショートステイを四日ほどお願いした。市役所外も含めて四カ所に電話をし、最後の担当課で、書類に記入するために印鑑を持って来所してほしいといわれた。療養中であり、肉体的・時間的にも無理というと、住民基本台帳ネットを見ながらだろう、家族でもよいという。 いささかムッときて、いくつかのやりとりの末、最終的にはご足労をおかけしたが、役所の縄張り意識(高崎市役所では、障害児・者関係の諸業務が年齢・中央官庁の補助金によって、ショートステイも年齢・ステイ先によって高崎保健福祉事務所児童相談部を含めて三カ所に分かれている。市民は二の次なのだ)や旧態依然の紙とハンコから脱却し、行政本来の職務とは何かを考えてほしいと思う。 (上毛新聞 2002年10月30日掲載) |