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◎判定規準の先を行く? 私事ですが、最近、シンクロナイズドスイミングにはまっています。シンクロがこんなに面白い競技だったのかとあらためて思うようになりました。特に、井村雅代コーチ率いる立花美哉・武田美保選手のデュエットのパフォーマンスには毎回度肝をぬかれ、思わずテレビの前で拍手をしてしまうくらい、見入ってしまいます。 少し前までは、シンクロナイズドスイミングというと、水中から脚を出し、厚化粧の作り笑顔という奇妙な印象しか持っていませんでした。しかし、立花・武田ペアは、今までのシンクロの「優雅なだけ」のイメージを覆し、「スピード感」や「力強さ」といったアクロバティックな要素をたくさん盛り込んだ、新しいシンクロ競技で魅了し続けてくれています。 この九月にスイスで行われたワールドカップで、日本チームは非常にユニークなテーマである「ワイルド・アニマル」でロシアチームの「白鳥の湖」に挑みました。サルや鳥、ライオンなどの動物をイメージした斬新な動きや正確な技で、バレエを基調とするロシアのデュエットの演技とはまるで対照的なパフォーマンスをしました。しかし、結果は惜しくも銀メダル、〇・一ポイントの重みに涙しました。シドニー五輪の時もそうだったように、立花・武田ペアの技のテクニックは「世界一」と評されているのですが、どうしてもアーティスティック・インプレッション(芸術点)で、ロシアやヨーロッパの選手に勝てないというジンクスが存在します。しかし、ワールドカップ終了後、井村コーチも訴えていましたが、シンクロナイズドスイミングで採点される「芸術」とは、いったい何なのでしょうか。バレエのような優美さしか、芸術の範疇(ちゅう)に入らないのでしょうか。 「芸術」や「美」というのを定義するということは、なかなか難しいと誰しも思うはずです。ピカソの絵を「芸術だ」と言う人もいれば、「あれは芸術じゃない」という人もいるように、個人の主観によって評価は全く異なるものになるのではないでしょうか。また、時代や文化によって芸術の評価や価値観は変化してきました。もしかしたら井村コーチのめざすシンクロは、今の判定基準の先を行ってしまっている、というのは言い過ぎでしょうか。 今年も、私の所属するNPO法人ジュース(http://www.jws.or.jpをご覧ください)が主催する女性トップコーチセミナーが熊本で開催されます。毎年女性のトップコーチをお招きし、私たちが日ごろ感じている疑問や質問をぶつけることのできるセミナーで、今年で五回目を迎えることになりました。今回は井村雅代コーチ、山口香コーチ(柔道)、秋山エリカコーチ(新体操)にパネリストをお願いし、「スポーツにおける女性のリーダーシップ」をテーマにディスカッションをしていただく予定です。また全員、「判定」によって勝敗が決まる種目のコーチであるため、そのあたりのことも聞いてみようという案も出ています。興味ある方はぜひ、ご参加ください。 (上毛新聞 2002年10月12日掲載) |