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詩人・作詩家 古舘 多加志さん(富岡市下黒岩)

【略歴】本名は俊(たかし)。東京で生まれ、甘楽町で育った。富岡高、明治大学卒。元東京新聞記者。在学中から童謡や歌謡曲の作詩に取り組む。02年4月から県作詩作曲家協会名誉会長。日本童謡協会会員。他の筆名にだて・しゅん。

県歌謡音楽大賞


◎40人が自慢ののど競う

 朝と夜は、炬燵(こたつ)が欲しい季節となった。二〇〇二年も残り二カ月余と、年月のたつはやさを実感する今日このごろだ。忘年会の話を耳にする機会が増えてきた。ここでは、本県の師走行事として定着の「県歌謡音楽大賞」に触れてみたい。

 このイベントでは縁あって昭和六十二年の第一回以来、昨年の十五回まで、連続して決勝大会の審査を務めさせてもらった。群馬を軸に隣接県を含めて、その年のアマチュア歌手ナンバーワンを決める、群馬テレビ放映の歌謡フェスティバルとあって、なかなかの人気だ。北関東では権威ある歌謡大会として位置づけられている。

 スタート時は、群馬テレビを後ろ盾に、群馬プロデュースと県作詩作曲家協会の共催事業の格好だった。五回から同テレビが主催、群馬テレビエンタープライズの共催に変わった経緯がある。立ち上げに関連しての新聞社等の後援協力取り付けでは、関係者と一緒に前橋市内の報道機関を訪ねたことが、昨日のことのように想起される。

 さて十六回目となる今年の決勝大会は十二月十五日、桐生市市民文化会館・シルクホールを会場に開かれる。それに備えての予選大会を通過した参加者による地区大会(西毛・北毛、中毛・東毛)が、十一月と十二月の初旬、赤堀町や藤岡市内の施設を利用して行われる。決勝では四地区から選出の総勢四十人が、グランプリを目指して自慢ののどを競う。

 グランプリ獲得は、プロへの登竜門ともいわれる。これまでの受賞者(一般部門)のうち、中村悦子さん(高崎)=第六回=、さとうまゆみさん(妙義)=第十三回=が、オリジナル曲をテープ化してプロの道を歩いている。健闘を祈りたい。歌謡音楽大賞は以前、一般とシニアの両部門に分けていた。途中から切り離して実施しており、シニア歌謡グランプリも十一回をこなしている。

 私ごとになるが、五回大会(シニア部門)で優勝の八木一輔さん(桐生)のオリジナル曲の作詞依頼を受け『夫婦情話』(曲・笠見実)=GTVミュージック=を手がけた。今、そのテープを手にして懐かしんでいる。歌謡音楽大賞の審査委員長(作曲家)には、これまで服部克久氏を皮切りに、市川昭介氏に続き前回から弦哲也氏を招致。決勝の舞台で歌う一人ひとりに「寸評」を挟む。

 壇上に整列の歌い手に、瞬時の感想を伝える作業でもある。歌唱指導に優れる一流作曲家の説諭で感心させられるのは、分かりやすい言葉で迅速に対応しており教わるところが多い。腹蔵なく思ったことを伝える先生、聴衆を笑いの渦に巻き込む話術の先生……と個性的。歌唱の本質を強調するために述べたと思われる「プロをまねた派手さは不要。アマチュアらしく」と訴えていた服部氏。長所をさがして包み込むように、優しい日本語を話す市川氏の詩的な言葉遣いが印象的だった。

(上毛新聞 2002年10月10日掲載)