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◎身近なものを魅力的に 過疎の問題について書きたいと思っていたが、この欄に向くうまい切り口がなかなか見当たらなかった。そんなとき、わがホームページの問い合わせ欄に東京都内の中学二年生から次のようなメールが寄せられた。 “この度、学校の地理の授業で「過疎地域の活性化のために、大きな観光施設などを建設するのは是か非か」という題材でディベートを行うことになりました。 「人がたくさん集まるし、仕事場もできる」 「大きな施設を建設すると自然が破壊される」 などいろいろな意見が出ているのですが、このような過疎地域での事例とか、ディベートするための材料とか、どこかのHPで情報が得られないでしょうか。” 教室でわいわいがやがやディベートする光景が浮かんでくるようであるが、過疎地域の活性化のために、大きな観光施設などを建設するというような事例は、一昔前のバブル経済のもとリゾート開発が盛んであった時代には全国各地で見られたが、今は大きく情勢が変わっている。そのことは別として、中学校の授業で議論の仕方を学び、生徒が頭の体操をするのには格好のテーマであるのかもしれない。 この問い合わせの中で、いろいろ出てきた意見として例示された「人がたくさん集まるし、仕事場もできる」「大きな施設を建設すると自然が破壊される」という二つは、中学二年生の誠に簡潔な表現ながら、過疎地域の永遠のテーマであるのだ。 過疎地域というのは、要するに、人口が減少してしまい、残っている人たちは高齢者が多く、働き盛りの若い人たちが少ないところである。収入がなければ人は生きていけない。過疎地域の若い人が収入の得られる都会に出て行くのは当然のことである。従って過疎地域では収入の得られる道をつくらなくてはならない。それが自然破壊につながることもあった。しかし最近の過疎地域では、どのような事業を進めるにしても、人間と自然環境との共生ということが最も重要なテーマとなっている。 全国の過疎市町村の数は千二百九十六(全国三千二百十九市町村の約四割。ちなみに群馬県は、七十市町村のうち十六)であるが、すべて地理的な条件、交通条件、気象、風土などが異なっているので、収入を得る道は一律というわけにはいかない。みんなが道の駅をつくるからわがまちでもという金太郎飴(あめ)はアウト。 ほとんどの過疎地域が持っているものと言えば、豊かな自然環境や伝承されている文化遺産などであるが、これからの時代、身近にある自らの持てるものをいかに魅力のあるものにしていくかが成否の分かれ目になる。 庭先や裏山にある紅葉、ナンテン、カキの葉などを料理の「つまもの」として、情報技術の活用により東京や大阪の市場の要請に応じて出荷し、女性や高齢者約二百人で年間二億円を売り上げているようなところもある。 (上毛新聞 2002年9月28日掲載) |