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◎自分で考える力が大切 明るい未来を切り開くために、自己確立と教養の必要性を唱えてきた。今回は、私が人生に必要と思っている五項目を紹介する。 一つ目は「夢と目標を持つこと」。これは生きるための源泉であり、国力にもつながる。日本の学生が「将来の夢が無い」と言うのを聞くが、何も考えてないから当たり前だ。他力本願と念力主義からは何も生まれない。何事も真摯(しんし)に根気よく、あきらめないで夢中になり、時に孤独と向き合い、妥協という選択肢を選ぶ知恵も必要だ。天才は別格だが、凡人も努力次第で天才に近づける。不可能と頭で考える前に、まず行動に移すこと。八十年という生涯は考えているほど長くはないと思う。夢や目標は、情熱と信念から生まれるものだ。 二つ目は「独創性を持つこと」。社会人として「最低月一冊は本を読み、新聞は全国紙・経済紙・地方紙の三紙を毎日読むこと」と社員研修で教え込まれたが、これは忙しい。しかし、ピカソの青年期の緻密(ちみつ)なデッサン画からあの抽象画が生まれたように、徹底した基礎教育と教養、幅広い情報収集と分析力、そしてマニュアルや旧来の方法が一番正しいという呪文(じゅもん)にとらわれない「自分で考える力」が大切と考える。トヨタ、ホンダ、SONYやMicrosoftにしても、最初はただの異端企業だった。ただし、自己を過信するあまり視野が狭くなり、保守派や反対論者を駆遂してしまうのはよくないだろう。 三つ目は「時間と礼節を守ること」。アメリカの大学では、教授がリポートの書式、枚数、紙のとじ方まで指定し、さらに提出時間を守らないと、どんな理由があろうが一切受け付けてもらえなかった。授業も三回までの欠席は認められたが、それ以上は許されず、たとえ成績が良くても、約束と時間が守られない時点で落第が決定だった。自由とは、ルールと時間を守って初めて認められる権利なのかと身に染みて実感した。小学校で習う「五分前行動」、これは本当に大切である。 四つ目は「良い友達を持つこと」。気心の知れた旧知の友人との語らいは楽しいと同時に、さまざまな業種、人生観、いろいろな地域の生きた情報を得ることができる。職場と地元、そして活字だけの情報では「井の中の蛙(かわず)」となってしまう。私も学生時代の友人たちと年に何度か「飲み会」を開催しているが、情報交換も含めて毎回参加するのを楽しみにしている。旧友の活躍・成功談を聞いていると、ふつふつと競争心が生まれてくるから不思議だ。 最後は「プライベートを楽しむこと」。仕事の能率・効率を上げるということは、余暇を楽しむために知恵と時間を結集する作業と考える。組織のために命や魂を捧げる社会人が多いが、組織の中で自己を守るのは自分の責任だ。たとえ自分の身に何か起こっても、組織にとって最終的には「問題無し」となる。これからの時代は、たとえ余暇に重きを置けなくても、余暇と仕事を同レベルで考える「ゆとり社会」を築いていきたいものだ。 (上毛新聞 2002年9月23日掲載) |