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里山クラブ主宰 川原 幸司さん(千代田町新福寺)

【略歴】三重県鳥羽市出身。関西学院大経済学部卒。区長時代から地域の平地林整備を進め、子供を集めた同クラブを主宰。現在、県警環境犯罪モニター、町森林環境教育検討委員も務めている。

平地林



◎先人の残してくれた宝

 樹木の活動期は、林縁部や里道など限定した刈り込みですが、今月からは秋の全面的な刈り込みに入ります。最も早くからかかわったフィールドは四年目に入りますので、当初大汗をかいたシイタケやツル性植物は、ほぼ一般の野草並みになってきています。特にシノタケの変化が顕著で、それに伴い他の野草類や実生した幼木などでにぎやかな林内環境になってきていますので、今秋から順次刈り込み方法を変えていこうと考えていますが、さてその具体的方法はとなると未経験の域でもあり、思案中です。今後どのように活用していくかの方向性が大きなポイントだろうと思いますが、いずれにしても人為的に変えていくのではなく、自然順応を重視する姿勢で進めていこうと考えています。林相の異なる幾つかの区域を決めて、おのおのに下草刈り方法や頻度、林床状態の程度など一定条件を設定して、それぞれの結果比較しながら試行する方法でスタートしてみるつもりです。

 さて、この時期からの「やま」は木々の枝に隙間ができて、春に張られたみどりの天幕が日々取り払われていくようで、林内からの空の青さが一段と鮮やかにさわやかに感じられるときです。また、標高四十メートル未満の平坦地の林であっても、カキや山クリ、クルミ、アケビ、キノコなどの実りも多く、採取の楽しみも用意してくれています。特にこのフィールドには、山クリの木が多いので、クリ拾いの方々が年々にぎやかになってきていますが、昨秋から「キノコ類」の発生も多くなっていますので、今秋は殊更大きな期待をしているところです。野鳥類も多くなるときで、夏鳥の帰りの中継地として、冬鳥の越冬地としてこれまたにぎやかですが、野鳥にとっても平地林はわずかに残った貴重なオアシスです。

 このように、春とともに林が大きく変化するときは、毎日毎日がエキサイティングで、人工の公園で絶対味わえない趣があります。ぜひお立ち寄りいただき、一人でも多くの方々にこの趣を体感していただきたいと思いますが、しかし、それよりも皆さま方の近隣に平地林があれば、その中に入れるようになり活用できれば、より一層素晴らしいことです。いずこの平地林もやぶ化し、ごみの投棄場所になっていますが、そのまま放置することは、せっかく先人の残してくれた宝を放棄していることですし、やがて別用途に転用されて永久に消滅してしまうでしょう。

 所有者責任論は正論かもしれませんが、少なくとも森林環境にこの論を殊更に言い立てるのは、非現実的で逃げの論法としか思われません。この論にとらわれていては、いつになっても住みよい環境は得られません。自分が住み良い環境を望むならば、他人依存ではなく、まず自らが行動することではないでしょうか。

 私たちもまだまだ勉強中ですが、平地林の手入れについては、多少の経験も積みましたので、要請をいただければ、あなた方のサポートは十分にできる心算でいます。もちろん、一緒の組織に入っていただき、ご活動いただくことも大歓迎です。あなたの汗で身の回りの自然がよみがえる体感は、なにものにも代えがたい素晴らしいものになるはずです。

(上毛新聞 2002年9月22日掲載)