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◎偏見差別の心をなくせ バブルの崩壊後、すっかり景気は落ち込み、今なお長い不況のトンネルであえぐ今日ですが、日本にあこがれ、職を求めて遠く海外から訪れる人たちが増えています。人口の一割以上が外国人という町も誕生し、もはや、共生や共存は日本人のみならず国を超えての問題になってきました。 日本で生活するためには、日本語ができなくてはいけません。生活するにも仕事するにも言葉が必要です。伝達手段の戸惑いから生活に適応できず、精神的に悩む人たちも少なくありません。大学、語学学校で外国語を専門に学ぶ日本人も多いが、そのほとんどが海外に渡るためのものであり、日本で暮らす外国人とのパイプ役に携わる人たちは極めてまれのようです。語学を生かし、途上国の援助救済に出向く日本人も増えていますが、言葉で苦労する在日外国人を支援していくことも大切です。NGOなど国際ボランティアが注目されていますが、在日外国人の生活支援、日本人との共生を図る架け橋となることもまた、国際ボランティアなのではないでしょうか。 今夏、NPO法人国際比較文化研究所主催、外務省二〇〇二年日中韓国民交流記念事業が群馬県で開催されました。韓国壇國大学校語文学部、南京師範大学外国語学院、高知大学国際社会コミュニケーション学科、三カ国の学生(各十人)と引率する教授が前橋市を中心に集まりました。高崎まつり、企業や施設訪問、県内観光、シンポジウム等々、短期間の中、国を超えて学生同士の交流や群馬の自然や文化を満喫しました。『多文化交流inぐんま二〇〇二』と題され、九日間にわたって行われた催し、三カ国の友好を深め、再会を誓う若人たち、まずは成功のうちに終わったと言っていいでしょう。 イベントの後半、『これからの多文化交流を考える』をテーマとしたシンポジウムが開かれ、中国と韓国の学生は専攻している日本語の成果を発揮しました。中には自信がなくたどたどしい日本語で意見を述べる学生もいましたが、一生懸命に伝えようとする姿に心を動かすものがありました。「交流を通じて自然と言葉や生活にも慣れ、多くの仲間ができた。ふれあうこと、体験することは、とても大切だと思った」「日中韓の友好、国際親善のために努力したい」など意気揚々と語る学生、「過密プログラムに追われ、ゆっくり語り合うことができなかった。交流とは何かと思った」と疑問を投げかける発言もあり、さまざまな視点から考えさせられるシンポジウムでした。 私たち日本人は、外国人といえば欧米人を思い浮かべます。時に、欧米人をブランド品のように高く評価し、アジアやアフリカの人たちを低く見る傾向があります。国際化、非常に響きのいい言葉ですが、真の国際人、国際社会をめざすためには先入感や偏見から脱却しなければなりません。在日外国人はもちろん、同和、障害者問題など、多種多様な人権に絡む社会問題が累積されています。日本人同士が偏見差別の心を持たないよう、そして、日本に在住する外国人への救いの道を一つひとつ努力し解決していくことが、国際化への第一歩なのではないでしょうか。 (上毛新聞 2002年9月16日掲載) |