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臨床心理士 樺沢 徹二さん(渋川市行幸田)

【略歴】東京学芸大卒。61年渋川北小を振り出しに教職に。98年渋川古巻小校長で退職。教育相談に携わり、退職後はスクールカウンセラー。東京学芸大、高崎経済大などで講師を務める。

リソース



◎豊かな生活実現に活用

 私たちはより良く生きたいと願い、そのためにさまざまな知恵を出してその実現に努めています。心の内側でみると、プラス思考で行動するとか、得意なもので自信をつけるなどはよく試みられます。音楽を聴く、スポーツをする、散歩する、ペットと遊ぶ、創造的な活動をする、お守りを身近においておくなど、日常的なものから特別に時間をつくって行うものなど、拾いあげれば自分の内外に潜在する力がたくさんあることに気づきます。

 このように、私たちが、より豊かな生活をおくるために持っているものを総称して心理学では「リソース」といい、直訳すれば「資源」「資質」の意味です。内面的なものとして「能力」「意欲」「興味関心」など、要するにその人の得意分野がリソースとして多く用いられます。また外面的なものとしては、家族や友人、愛用のもの(ぬいぐるみや使い慣れた腕時計など)、動物(ペット)、植物(観賞植物)などがあります。

 リソースの活用は、人間は本来よりよく生きる能力を持っているもので、うまくいかないのは、既に持っている能力を有効に使っていないからという考えに基づいています。

 よりよく生きたいと望んでいる人への外部からの援助も日常的に行われていることに気づきます。個人の主体性を配慮せず、新しいものを与えてやったり、逆にどこか悪い部分を取り除いてやったりするものではなく、その人が本来持っているもので、気づいていないリソースを使ってみようという気持ちになる環境をつくることが大切です。あなたを支援してくれるものが、あなたの内外で待機していますよと言ってやることです。

 個人の外からの社会的援助には次のものがあります。(1)信じてあげる、共感する、受容する、親しみを示す、世話をする、といった情緒的な援助(2)仕事を手伝ったり、身体の移動を手伝ったりなどの直接的な手助け(3)よりよく生きるためにヒントとなる情報の提供(4)良くできた、頑張った、ここを改めるともっとよいなど、意欲がわくような評価―などです。

 社会の急速な変化にともなって、うまく生きにくくなっている今日、さまざまなストレスから解放されたい、克服したいと願っている人は少なくありません。人間はさまざまな環境とかかわって生きており、その環境との最適な関係を保つことが求められています。そこで、個人が持つさまざまな条件の向上とともに、周囲の人々を含む環境との関係を向上させていく方法をもう一度考えてみてはいかがでしょう。人々が共に生き、それぞれの生き方を尊重し、主体的に生活環境の向上を目指して、だれでも切り捨てられない社会の実現が理想です。問題が起きる前に、予防的な観点からも日常的に、一つずつ実践していきたいと思います。

(上毛新聞 2002年9月5日掲載)