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◎専門能力生かし仕事を 「もう、ノロマなんだから。さっさと着替えてよ! おじさん時間に厳しいんだから」 「ウン、やっぱスーツの方がいいかな?」 「当たり前でしょ。今日はお祝いなんだから、おばさんなんて超リキ入ってるわ」 「おじさんも六十歳か。定年なんてもったいないね。あの判断力とかバランス感覚なんてあこがれちゃうよな。やっぱ、本気で『能力成果主義賃金』の導入や『管理職体系』の見直しが必要となってくるぞ」 「何よそれ」 「つまり、雇用の仕組みを、年齢を基準としたものから変えていくってことさ」 「つまり、それって、なんなのよ」 「ウチの会社もそうだけど、日本の大半の会社の給与は、年齢や勤続年数が増えるとそれに伴って上がるようになってるよね。そうなると六十歳で定年退職してもらわないと、コストがかさんで困ってしまう。また、年齢が上の人を管理職にするという考え方だと、六十歳で辞めてもらわないと後がつかえちゃう」 「フンフン、給与や役職は年齢で決めないってことね」 「そう、給与は、その人のその時々の能力や、貢献度に応じて決める『能力成果主義』の賃金にしてしまう。それから、ある年齢に達すると管理職にするんじゃなくて、最後まで担当者としての専門能力で仕事をしてもらうという形に変える。そうすれば長く働ける」 「何で長く働かなけりゃならないワケ?」 「もうすぐ超高齢社会がやってくる。この社会はものすごくお金がかかるんだ。年金や医療や介護費とかね。この支出をあまり増やさないようにするには、働きたいと思ってる人や能力がある人は働き続けて、若い人だけが社会保険料や税金を納めるという社会システムを変えなくてはいけない。それに何より、おじさんみたいなサエてる人は、まだまだオレたちの見本として頑張ってもらいたいよ」 「そりゃそうよ。何てったって私のステキなおじさんだもの」 「それに、リストラされちゃった中高年が再就職できない最大の理由は、年功制にある。給料は我慢するから、あるいは訓練を受けて能力を身に付けるからといっても、その企業の給与規程が年功賃金だと採用年齢に制限が出てきて就職できない」 「だけど、二十代と四十代では、生活に必要なお金の額が違うでしょう。ウチも教育費がバカにならないし、ローンもあるし、給料が減ったら困っちゃうじゃない」 「つまり、生活給の捕らえ方だね。君の意見は、君や子供たちを含めた世帯単位の生活給を前提にしている。だから、日本の賃金は世界一高くなってる。国際的に見た場合、生活給は本人と未成年の子供が生活していくだけの分しか考えていない。教育費は、大学生以上は奨学金を受け、後で自分が返すという教育を受けてる」 「元気な大人は働かなくっちゃってことね」 (上毛新聞 2002年9月4日掲載) |