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◎厳しくなる日本の財政 「あなた、知ってた? 今六十五歳以上の人口比率が18%なんだって」 「そうだよ。もっとすごいことに、十三年後の二○一五年には26%になるといわれてるんだ。つまり、人口の四分の一が高齢者。世界で一番の高齢者比率の国<ニッポン>ってことになるってわけさ」 「あのさ、単純に言っちゃって悪いけど、世界一ってやっぱうれしいよね」 「しかも、日本の場合、世界一高齢化するだけでなくて、そのスピードも世界一なんですね。ヨーロッパの平均に比べて二倍のスピード。フランスなんかと比べると四倍くらいのスピードで進んでるんだ」 「やったね。ステキ!」 「長く生きていられるってことは、日本人を取り巻くあらゆる環境がステキといえるんだろうけど…」 「何よ、その…は。素直に喜んじゃいけないわけ?」 「ウン、日本が世界で一番の超猛スピードで人口比率が変わったってことは、それだけドラスチックに、そして速やかに変化に対応した社会システムの転換を遂げなければならない。それには覚悟がいる」 「何それ、何言ってんの」 「つまり、年金や医療や介護といった高齢化問題が、日本の財政をますます厳しいものにしていくってことさ。これ以上負担を増やせば企業は疲弊するし、現役労働者の生活水準は低下しちゃう。かといって年金をめちゃくちゃ減らすというわけにはいかない。一昨年の厚生年金法の改正は、支給開始年齢の引き上げと給付水準の抑制によって、生涯に受け取れる年金の受給額の二割をカットするというものすごい荒療治をしたわけだけど、これ以上やると、一体何のための年金制度なのかという話になっちゃうのでそれも難しい。加えて『中国ユニクロ現象』やIT化の波で、雇用問題が深刻化し、オレもリストラされちゃうかも」 「そりゃあ困っちゃうわ。何とかしてよ」 「何とかしてって言われてもね〜。景気が良くなってくれるしかないんだよ」 「そうか、景気が良くなればいいんだ。なんだ、答えは簡単だ」 「景気はすぐには良くならない。現実的には財政支出をあまり増やさないで済むようにすることを考えないとね。つまり、高齢になっても年金生活に入るのではなく、働きつづけて社会保険料や税金を納めつづける高齢社会を支える側にできるだけ長くいてくれるような社会システムをつくらないとね」 「ズ〜ッと働くってこと?」 「そうさ、だから覚悟がいるって言ったろ」 「そういえば、あなたの会社の社長さんは六十八歳だったわよね」 「そう、元気だぜ。問題は年功的な賃金・昇進体系で『能力成果主義賃金』の導入や管理職としての処遇でなくプロフェッショナルとして処遇する仕組みとかが必要となる」 (上毛新聞 2002年8月26日掲載) |