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◎地域の子は地域で育成 六月、近県の公立文化施設協議会の通常総会で「地域、住民と公共文化施設の関(かか)わり」と題し講演を行った。普段の活動を中心に国際交流事業などもビデオ画像を交えて紹介した。 この講演を聞いてくださったのは文化会館の館長や企画担当の方々で、メモを取り熱心に聞いてくれた。特に、私が提唱している「音楽クラブ」構想については講演後も質問が相次いだ。 現在、日本の音楽文化の底辺を支えているのは言うまでもなく学校の部活動だ。吹奏楽においても全国に約一万五千団体あるが、その八割が部活動。 戦後、焼け野原となった状態の中で、子供たちに文化活動を体験させる機関は学校をおいてなかった。 本来、部活動は生徒の自主的な運営によるのが建て前だが、実際には顧問の先生方の並々ならぬ努力と犠牲の上に成り立っていた。 しかし、経済成長を遂げGNPも世界トップクラスになった今でも学校に頼りきっているのが現状だ。 これまでの文化活動に対する部活動の功績は計り知れないほど大きかった。しかし、情報化社会が急速に進んでいる現在、子供たちの選択肢も広がり、「音楽もやりたいがスポーツも…」と、心の健全な子供たちが考えるようになってきた。このような状況でこれまで通りの部活動では部活離れが進んでいくと思われる。それは、わが国に音楽文化の底辺が揺らぐことを意味する。 周知の通りヨーロッパやアメリカには部活動は存在しない。皆、放課後はいろいろなクラブに参加し、楽しく自分の特技を磨いたり発見したりしている。そこには専門のインストラクターがいて能力に応じた適切な指導が受けられる。 ヨーロッパのある音楽クラブは子供から大人まで会員数千五百人を数え、吹奏楽、合唱、管弦楽などにそれぞれ所属し音楽を楽しんでいる。また、クラブの中に音楽学校も併設し専門教育も受けられる。 契約社会が進み個人主義的な考えが多くなってきている現在だが、そんな中で最も危惧(ぐ)されるのが心の問題だ。 そんな時こそ音楽の威力が発揮されると思う。旋律は個性。美しい和音は協調性。そしてリズムは生きる喜び。オーケストラは地域社会の縮図だ。個性を生かしながら融和している。「音楽やる人に悪い人はいない」と言われるが、無個性、無感情、自分勝手ではアンサンブルが成り立たないからだろう。 音楽クラブには子供からお年寄りまで参加できる。子供たちにとっていろいろな大人から刺激を受けることはよい体験になるだろう。また、大人も地域の子供たちと接することにより愛情もわくだろう。「地域の子は地域で育てる」。当たり前のことだが、それが音楽クラブの一番の目的だ。 (上毛新聞 2002年8月3日掲載) |