視点 オピニオン21
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上州の夏祭り実行委員会・前事務局長 
滝沢 細雪 さん
(前橋市天川大島町 )

【略歴】嬬恋村生まれ。前橋工業短大卒。東日本デザインビジネス専門学校非常勤講師、建築デザイナー。1999年上州の夏祭り実行委総務副部長、00年、01年同実行委事務局長。

海外観光



◎人との出会い楽しみに

 海外へ出かけ、出入国審査でパスポートを提示します。最初のころは言葉がしゃべれるわけでもなく、不安でドキドキしながらパスポートを提示していました。何を言われても「観光です」としか言葉を用意していませんでした。慣れてくるとあせらずに相手の言葉を聞けるようになりましたが、ほとんどは何も聞かれず入国できます。

 何回か経験してくると周りの様子も注意してみられるようになります。パスポートの審査で長く質問されている人、バッグの中身を開けて説明している人。気がつくと私も含めてほとんどの日本人の人は何も問題なく手続きが終わります。外に出るようになって初めて日本という国に守られているのだと感じました。私個人の様子や目的とは関係なく、日本人もしくは日本のパスポートを所有しているというだけで問題なく入国を許可されます。単純に観光目的のためでもあると思いますが、何度か訪れている国でも簡単な質問をされる程度で済みます。

 日本という国や日本人が他の国に信頼されているということなのでしょうか。あらためて自分が日本人であるということを感じました。

 日本の歴史や文化をどうとらえるかということだけでなく、日本の経済や外交がどう個人に影響するかということを考えます。今時分不安もなく海外の国に遊びにいけるということは今まで日本を築いてきた多くの国民の力だと思います。日本の現状としての政治や政策、経済の問題はさまざまありますが、自分自身の生活の中で国民である自分がいるということを実感しました。

 人種差別や宗教の問題など、今までの環境では感じなかったことも他の国に行ってみるとさまざまで、同じ国民であっても人種が違えば言葉を交わすことすらしないということもあります。共通の言葉はあっても使わず自分の民族の言葉で話し掛けるという光景も目にします。また、反対に共通の言葉を使いながらもお互いの言葉を理解し、相手の言葉で答えたりもします。日本にいると日本語でしか会話もせず、なかなか英語も身に付かない私にとってはうらやましい光景でもあります。

 ある町のコンビニエンスストアで買い物をしたとき、日本人は「英語もしゃべれない」と店の人が言っているのを耳にしたことがあります。そのときは少し恥ずかしい思いをしました。その後買い物をするときなど英語ではなく、その国の言葉で「ありがとう」というようにしました。店の人も笑顔で返してくれ、話し掛けてきます。「ああ、向こうも緊張していたのかな」と思います。前のコンビニエンスストアでの一件を思い出し、コミュニケーションがとりたいということだと理解しました。

 ニコニコしているのは日本人だけだということを聞きます。確かにあまりにも無防備な気持ちで歩くのはよくないですが、言葉が多少わかる、理解しようとする気持ちで接すれば、ほとんどの人はいやな顔はしません。反対に言葉がわからなくても、コミュニケーションをとろうといろいろ話してくれます。

 観光ではその国を知るために行くのですから、さまざまな人との出会いを楽しみにしたいと思います。また、自分の国や自分の考えをもう一度見直す貴重な時間です。


(上毛新聞 2002年8月1日掲載)