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◎流用はもってのほかだ 図書整備費 今年の四月二十三日、国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた「子ども読書活動推進フォーラム」に出席する機会を得た。このフォーラムは新たに制定された「子ども読書の日」を記念して文部科学省主催で開催されたものである。このなかで子どもの読書活動推進についていくつかの優秀実践事例の報告を聞くことができた。しかし、その多くが私立の図書館や文庫活動などのボランティア活動をしている方たちのもので、あらためて子どもの読書環境について考えさせられた。 わが国では二○○○年を「子ども読書年」として国を挙げて子どもの読書環境の整備を支援してきた経緯があり、その流れのなかで国立の国際子ども図書館が開館するとともに、昨年十二月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、ユネスコが「世界・本と著作権の日」としている四月二十三日が「子ども読書の日」とされた。同時に、同法では子どもにとって読書は生きる力をつける上で欠かせないものと位置づけ、国や地方自治体に対して読書活動を進めるための施策などを義務づけた。 文部科学省と総務省ではこの法を受けて、学校図書館の図書整備費として本年度から五年間で六百五十億円を地方交付税として支援することを決めている。本年度から百三十億円が学校図書館の図書整備費として交付されるわけである。 しかし、平成五年に「学校図書館図書基準」が制定され、今回と同じように五カ年計画で総額約五百億円が地方交付税措置され、学校図書館の蔵書充実政策が実施されたが、その成果はあまり見られなかった。二度と同じ轍(てつ)を踏まないようにしなければならない。問題は図書整備費が地方交付税で措置されるので、そのまま図書の購入費にはならないところにある。地方交付税は使途が制限されず、自治体の裁量に任されてしまうので、図書とは無関係の事業に流用されることもある。 全国学校図書館協議会の調査によると、今回も、図書購入費として本年度予算化されている自治体は約30%にすぎないという驚くべき実態がある。どの自治体でも財政的に苦しい状況に置かれていることは承知しているが、子どものための図書費を他に流用してしまうとはいったいどういうことなのか。 「図書費は未来への投資」ということばがある。法の趣旨が理解されていないのか、「未来」を目先のことに消費してしまう自治体が多いと思うと暗澹(たん)たる気持ちになる。 現在、子どもの読書活動は、ボランティアの方たちの善意に支えられている部分が極めて多い。しかし、それに甘えずに、自治体は自治体としての責任を果たしてほしい。また、関係者はチェックして、予算化されていない自治体に対しては、補正予算を組むよう働きかけるべきであろう。そして、国は予算を付ければ終わるのではなく、予算が趣旨に沿って使われているかを見届けてほしいと思う。 (上毛新聞 2002年7月29日掲載) |