視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
会社役員 佐羽 宏之さん(桐生市相生町 )

【略歴】群馬大大学院工学研究科修了。82年に三立応用化工に入社し現在は専務取締役。一昨年3月まで県中小企業団体青年協議会会長。桐生市市民の声の会サブリーダー

まちづくり



◎同種施設の整理統合を

新たなまちづくりを実施するに当たり、その原資をどこから捻出(ねんしゅつ)し、どのような施策を行うかは大切な問題である。まちづくりは、行政が関与する部分が大きく、市民だけでは難しい。地方財政が厳しく財源がない時代であるが、時代に合った効率のよい行政を行い、自治体にも体力を付ける必要がある。今後は、行政自らが行う事業と、民活で行い行政が支援すべき事業を見直し、効率化する必要がある。行政が「入るを計りて出るを制する」活動に徹し、スリム化するところに市民との協働も生まれる素地が見いだせよう。

 明治以降、日本の人口は爆発的に増え、公共施設が造り続けられてきた。「便利にして福祉を向上する」という名目で、施設を分散して、人が集まる仕組みを結果として破壊するまちづくりが行われてきた。この施策は、右肩上がりの経済力と、人口増加があってこそ維持可能である。高齢化が進み、人口減少と税収が低迷する現在、膨張し分散した資源を集中して、効率よく活用する工夫が必要である。

 いま行政が目指すべきは、同種の施設を整理統合し、資源を節約しつつ民間活力を利用した、住みよいまちづくりである。具体例としては旧市街地の小中学校、高齢者のための浴場、公民館などの統合による合理化などである。小中学校は児童・生徒数が減少し、空き教室がたくさん出ている。児童・生徒数の少ない旧市街地の小中学校を同地区の小学校、または中学校のどちらか有利な立地条件の一校に集約する。小学校同士の統廃合は、通学範囲の拡大にもつながり問題が多いと思われるが、同地区の小中学校は近接しており、一体化し、九年間一貫校となることにより、設備稼働率の向上と人材の有効活用のみならず、未消化学習内容の補習なども容易になると思われる。また、空き施設を利用した市街中心部への学校の集合も可能となろう。

 高齢者用のお風呂も市内には幾つもあり、実際銭湯に代わりコミュニティーセンターの役割を果たしている。これらの施設も充実の上、一カ所に統合し、そこまでの足を公共交通でしっかりと確保する。

 まちの活性化というと、中心市街地の活性化が第一に取り上げられる。旧市街は、新しいまちを形成している郊外型ショッピングモールにはない魅力を提供するのでなければ勝ち目はない。本来、人が集まる所にまちができるのであって、まちがあるから人が集まるのではない。魅力ある仕掛けがあるほど、多くの人が集まりにぎわう。コミュニティーセンター、市民市場などさまざまなアイデアが出ているが、これからの地方行政は、民間が行う活動が活性化するように法規制を見直すこと、交通インフラを維持することなどを通じ、まちの活性化という最終目標を達成してこそ、成果と見なす姿勢が求められる。

 これらは、現在の受益者の反対も予想されるが、財政的にも破たんのない地方自治を進めるためには、自治体として避けて通れないことである。未来を見据えて、手段と目的を取り違えないよう仕事を進めなければならない。


(上毛新聞 2002年7月22日掲載)