視点 オピニオン21
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日本ラグビーフットボール協会理事会計役 
真下昇 さん
(横浜市港北区大豆戸町 )

【略歴】前橋高校、千葉大学人文学部国文学科卒業。東京都内の出版社勤務の後、フリーランス・エディター(書籍編集業)になり、現在に至る。高崎に居住して8年。子ども3人の父子家庭。

審判員



◎向上心持ち研さんを

 日本国中を熱狂の渦に巻き込んだ、日韓共同開催のサッカー・ワールドカップが、成功裏のうちに無事終了してなによりであった。今大会、日韓双方の国の代表が決勝トーナメントに進出しての大活躍、特に韓国代表がベスト4に入るという立派な成績を収めたことは特筆すべきものであった。

 この大会を通して、国民がスポーツに強い関心を抱いたことは素晴らしいことである。それも代表が一戦一戦勝ち抜くたびに、皆がのめり込んでいった。スポーツとは勝たなければならない宿命を帯びたものだと、つくづく思った。あらためて日本代表イレブンの活躍に敬意を表したい。

 成功裏に行われた大会ではあったが、一方では不快な話もあった。大会の成果に水を差すような審判問題である。先の冬季オリンピックでももめたように、今大会でもレフェリーや線審までが、自分の判定が誤審であったと自ら告白する場面があったのは遺憾である。両チームや観客等すべての人たちに一番信頼され、権限を委ねられているレフェリーから、このような発言が大会期間中に出てくるとは情けない。これでは大会そのもののステータスとレフェリーの威信を失いかねない。

 誤審をするような低レベルの者を登用した点に問題があるのか。また、そのような発言をせざるを得ないプレッシャーがかかるような環境に彼らを置いてしまったのか、いろいろと論議のあるところではあるが、大会本部としてこれらの点について猛省すべきである。要は競技役員として自己の責任をしっかりと全うし、判定に毅然(きぜん)と不動の精神で臨んでほしかった。

 人間が判断することであるから、全く間違いがないものとは断言できないが、ミスを少なくする努力はできるはずだ。ルールに精通することはもとより、数多くの複雑なプレー場面に遭遇して、それに対して適切な判断を下す実戦での経験が貴重であり、経験を幾重にも積み重ね自信を得ることにより、精度の高い正しい判定基準が構築される。それを糧として、プレーの局面に即して瞬時に判断していかなければならない。

 ボールゲームの判定は大変微妙であり、判定一つでゲームの流れが大きく変わってしまうことはしばしばある。特に得点にからむ場面での判定は、生活のかかったプロの選手にとっては死活問題になることもある。しかし、人間がプレーして人間が判断していくのであるから多少の間違いが起きても許し、それを受け入れて楽しんでいく。そのような寛容の精神がスポーツを行う者や、見て楽しむ人たちの心の中になければいけないのではないかと思う。

 すべてのスポーツの判定が機械化されてしまっては、冷たいものになりはしないであろうか? 一部にビデオを取り入れ、科学的な手法で判定を助けるのであれば、それに越したことはない。しかし、スポーツを機械相手に戦うようなつまらないものにしないよう、競技に携わる審判団諸兄の、さらなる奮闘をお願いしたい。それは自己との闘いであり妥協を許さず常に向上心を持ち、より多くの経験を積み研さんすることにより、己を大樹のごとくはぐくんでいくことである。何びとからも信頼される審判像をつくってもらいたいものである。

(上毛新聞 2002年7月14日掲載)