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嬬恋村商工会長 戸部 一男 さん(嬬恋村三原 )

【略歴】前橋工卒。73年に嬬恋村で酒販食品卸会社「大野屋」を創業し、76年から社長就任。国税モニター、村商工協同組合専務理事、吾妻法人会理事などを歴任し、99年5月から現職。

フィルムコミッション



◎連帯感と活力の創出へ

 フィルムコミッションといって映画やテレビドラマ、コマーシャルフィルムやビデオなどの撮影を誘致し、直接的に消費効果を期待したり、間接的には地域の広告、観光宣伝の目的も果たそうとして、自治体や公共機関が非営利で運営する組織が世界的に活動を活発化していて、わが国でも注目され始めているという話が、昨年の七月初めに商工会に持ち込まれてきた。

 日本中の自治体が、あの手この手とやってきた地域振興策も、長引く不況の中で手詰まりになってきているときに、なんと新鮮で魅力のある話だろうと感じた。広大で多様な自然が売り物のわが嬬恋村にうってつけな事業かもしれない、放映される映像を見て、村民が自分の郷土に関心を持ち、わが村意識に目覚め、それによって連帯感をはぐくむという、新たな方法の活性化策になるかもしれないと考えた。

 上部機関である県の行政事務所の指導を受け、村当局と議会関係者に相談し、観光協会に協調を申し込み、農協にも協力を要請した。その上で理事会を開いて事業化を決定した。村を挙げての協力体制が、事業を成功に導く上で極めて重要と考えての準備活動であった。翌八月に開催された全国フィルムコミッション連絡協議会の設立総会に担当者を派遣し、これに加盟し、いよいよ事業は具体化されることになった。他の例を見ると、自治体がその職員を使って直接運営をする形が多いようだが、私たちはボランティアの実行委員会二十六人と、商工会職員が中心になって実務にあたることにし、それを特徴にすることにした。

 九月になったら、まだ準備中なのに早速撮影の申し込みが立て続けに入ってきてしまい、商工会の事務局長は準備不足の中で孤軍奮闘した。人気グループTOKIOのトップスター山口君と城島君が村の田んぼで稲刈りをし、古い民家でごはんを炊いて食べるという、食糧庁のコマーシャルが四日間かけて撮影され、それが嬬恋村フィルムコミッション初の大仕事になった。全国放送のテレビに映されたコマーシャルを見てみんな感動した。経済産業省の地域振興活性化補助事業としても認められ、村からも予算配分が得られた。インターネット上にホームページも立ち上がり、パンフレットも名刺もできたし、ダイレクトメールも二千二百通発送して、さる六月三十日設立記念式典を開催。商工会がやるのも、村地域でやるのも日本で最初、本県ではもちろん第一号のフィルムコミッションの旗揚げとなった。

 でも、本番はこれから期待にこたえて、事業を成功裏に導くという重い重い責任がある。また、その後日本中で雨後のたけのこのように参入が相次いでいる。それらと比べられながら競争もしてゆかなくてはならない。大切なことは非営利、公平、公正の原則を貫くこと、それに地域に理解と協力の機運をしっかり育てることだと考えている。これを通じて村民の中にわが村意識が生まれ、確かな連帯感と活力をつくりだすこと、それにより地域全体として、より一層社会に貢献できるようになれればいいと思う。

(上毛新聞 2002年7月11日掲載)