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◎批判されず語れる場を スクールカウンセラーとして学校にいると、生徒だけでなく先生方といろいろな話をする機会があります。生徒への対応について話し合っていると、先生個人の不安や迷いに触れることが少なくありません。「よかれと思ってやったのに、生徒や保護者にうまく伝わらない」「生徒のためにこうしたいのに、学校組織の中では難しい」「自分は教員として不向きではないか」と悩んだり、個人として葛藤(かっとう)し、困惑する姿が伝わってきます。 学校というのは、単一的な専門的技能集団で構成されており、それぞれ先生方個人の判断に学級経営がまかされてきました。担任ともなれば、四十人近い集団をまとめ、クラスに問題が生じれば、即対応しなければなりません。その他日常の業務や会議、研修にも多くの時間をとられます。 また、学校の中では「形に表れる達成度」や前向きで熱意ある」という価値観が根強く生きています。そのためか、いつも力を抜かず、「〜ねばならない」という自己規制の中で、仕事をすることを余儀なくされているように思います。よい教師といわれる先生ほど、弱い面を見せず、援助を求めにくいということが起きています。 しかし、今の学校はさまざまな問題を抱え、担任一人では対応しきれない生徒も増えています。そんな中で、同僚たちの目や評価を気にし、誰にも相談できず、一人で頑張って、バーンアウトしてしまう先生は少なくありません。良心的で熱心な先生ほど、そうなりやすいという悪循環があり、平成十年の段階でも精神疾患により休職した教員の数は、過去十年間で一・五倍にも増加したと報告されています。 最近、職場のメンタルヘルスの立場からは、緊張を強いられる消防、救急隊員や看護師また虐待対応の職員などは、仕事の中でストレスや心的外傷を受けることが多く、職場を離れた場で、いろいろな問題を生じやすいことが報告されています。それを防ぐために、“ディブリーフィング”と呼ばれる、「任務について語りながら、感情的処理をすること」ができるサポート体制が、重要であるということが言われるようになってきました。人間を相手にする仕事には終わりがなく、相手からストレスを受けることもあり、自分自身が疲労しやすい状況にあります。また大変な仕事であるわりに、使命感が求められ、つらさを訴えにくいという点があります。さらにストレスを抱えた自分の状態に気がつかずに働き続けると、自覚がないまま相手を傷つけてしまうことも起きてきます。 今後、本当の意味で、学校が変わっていくためには、教師への対応を含めたサポート体制を整備することが大切であると考えます。これまでの教師としての職業的な枠を離れて、一人の個人としての思いを、批判されずに語れる場があって、初めて生徒の気持ちを心から受け止められるようになるのではないかと思います。 (上毛新聞 2002年6月29日掲載) |