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◎知恵、情熱、真心で創出 生ごみを燃やすと罪になります―。この新しい条例で、街は大騒ぎです。これまで焼却処理をしていた生ごみの別な処理方法を考えなければなりません。これを資源として使うことはできないかと、休んでいた町工場は、それぞれのネットワークを利用したり、地元の農業高校とコラボレーションをしたりして、新しい技術開発に励みました。若い経営者たちは世界中から情報を取り入れ、眠っていた匠(たくみ)の技術を融合させたさまざまな処理方法を開発しました。 その方法は、各家庭単位で処理できるものから、アパート、マンション単位で処理するもので、肥料や飼料となっています。特筆すべきは、町工場のネットワークで開発されたバイオガスシステムです。街中の庭や畑の少ない地域で、生徒数の少ない学校の空き教室や校庭を使って運用され、生ごみからメタンガスを発生させ、燃料電池で変換してエネルギーを創出するものです。加えて風力とソーラーも、うまく活用して、コジェネレーションをやっており、この学校の電気はすべて生ごみで運用されています。学校が休みの時でも、子供たちが交代で生ごみを運んでおり、そのエネルギーを電力会社に売電しているため、収益が上がり、学校内に、ホテル並みのカフェテリアがあります。給食時の子供たちの笑顔がこの地域の人たちの誇りとなっています。また、子供たちが利用しない時間帯は、お年寄りやお母さん方の憩いの場ともなっています。家庭やアパートの処理システムは高額で、処理方法が面倒なのですが、住民の努力に加えて行政の応援もあり、順調に動いています。 生ごみの内容は、家庭、あるいは季節により違うことから、個別対応が必要になり、町の電気屋さんが大活躍することになりました。電気屋さんは、処理機のチェックの際、ひとり住まいのお年寄りへの食料品などの宅配サービスも始めました。これは、地域商店街と信用金庫、そして地域ボランティアが協働し、デビットカードやエコマネーを採用して可能になったシステムです。サービスを提供する側も、受ける側も、ともに「ありがとう」と言い、人々は以前よりやさしくなりました。 条例施行一年後、行政を驚かせたことは、生ごみを自治体で処理しなくなったことにより、雑古紙、ペットボトル、缶などのごみも大幅に削減したということです。そこで、焼却炉を100%稼働させるために、近隣町村からもごみを受け入れることになり、経費の削減どころか、焼却事業として収益が上がり、教育と福祉に大きな投資ができることになりました。 近ごろは、ごみ減量と「ありがとう」の街としてイメージアップされ、世界中から多くの視察者が訪れて、ホテルや飲食店は大忙しで、街は活気に満ちています。先般の国民意識調査で住んでみたい街ランキングの第一位に評価され、すべての住民がこの条例に感謝しているということです。二十一世紀の夢の街は、日本人の知恵と情熱と真心で創出されます。 (上毛新聞 2002年6月17日掲載) |