視点 オピニオン21
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大風呂敷主宰 山田 耕司さん(桐生市本町2丁目 )

【略歴】明治大卒。在学中から俳句雑誌の編集に携わる。河合塾東京地区講師。近代化遺産ともいえる築140年の商家を活用した「大風呂敷」を経営。県の「一郷一学塾」の講師も務める。

おおさわぎ

◎自分とは?古里とは?

 五月十一日土曜日、深夜零時。前日までの冷たい雨が収まったその一日。五会場十二時間にわたる、私たちの「おおさわぎ」が幕を下ろした。桐生文化市。二回目である。

 そもそもは、自分たちの遊び場所は自分でつくる、ということで始まった企画が、桐生文化市である。特定の財源を持たず、特定の組織もない。そんな事業を実現するために、人が走る。みなさんからいただく協賛金だけが頼り。スタッフの情熱と元気だけが頼りの「おおさわぎ」、それが桐生文化市である。

 毎月第一土曜日に関東有数の骨とう市が行われる桐生天満宮。ざっと四百余年の歴史を有する。ここは「水」のエリア。和風カフェを中心に「いやし」の空間を演出。雨上がりの参道で地元の太極拳グループの方々の演舞、その横を、群馬大学工学部啓真寮の若者たちのみこしが過ぎていく。「本」のエリアは森さんのお宅の店蔵。羽仁五郎の生家の歴史ある空間はアーティストたちのライブペインティングにより数々の作品が生まれていく。

 買場通りと呼ばれている桐生商業発祥の地がある。その一隅が「金」のエリア。ものづくりのマーケットにはヘアアレンジ、Tシャツ、アクセサリー、オーダーメードシャツ、キノコなどの物産、梅田のおばちゃんの山の幸などの店と韓国料理をはじめとする食の店舗。「土」壁の美しい有鄰館、みそ・しょうゆ蔵が「土」のエリア。服飾を中心としたファッションのアーケードとダンスフロア。和太鼓・ジャズドラムス・スチールドラム・民族楽器・カポエイラのセッション「鼓舞」の会場ともなった。

 そして、第一回桐生文化市のメーン会場、北川さんのノコギリ屋根工場と敷地内は、今回は「火」のエリア。桐生市内の若手経営者の食べ物屋さんが軒を並べる。DJブースの横には桐生うどん会の掛け声。中庭のラウンジはいつも満員。いやはや書き切れない。

 文化市はたった一日の事業である。そのために桐生在住の二十、三十歳代が走り回る。現実にぶち当たって立ち止まる。考える。そうした過程もまた文化市。いやむしろ、一日の事業によって「桐生らしさとはなにか」「自分たちとは何者なのか」とマジで考えることでこそ活性化される文化市以外の日常が、文化市が目指そうとした世界なのだ。

 市町村合併、企業の再構築、社会の構造改革などの文字がうたわれない日がない現在、私たちには、私たち自身の顔を自身でつくる責任が発生しているのではないか。責任とはチャンスでもある。桐生という環境の中で、そのチャンスを遊んでしまいました。遊んでいる人々の顔がよく見える一日でした。ありがとうございます。


(上毛新聞 2002年6月7日掲載)