視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎多大な恵みを受ける 機能別の評価額を見てみますと、(1)水源かん養機能については、洪水緩和、水資源貯蔵および水質浄化で二十九兆八千五百億円(2)土砂災害防止・土壌保全機能については、表面浸食防止および表層崩壊防止で三十六兆七千億円(3)地球環境保全機能については、二酸化炭素吸収および化石燃料代替で一兆四千七百億円(4)保健・レクリエーション機能については、保養効果で二兆二千五百億円―となっています。 そこでこれらの機能がどれくらいの規模のものなのか、主なものを挙げてみますと、(1)の洪水緩和では、森林は洪水時のピーク流量を三分の二にカットし、既設洪水調節ダムの四倍相当の働きをしています。水資源貯蔵では森林の保水能力は四百四十億トンで既設ダムの二・五倍、生活用水の三倍となり、この年間貯留量は千八百六十億トンで、水田の九倍となります。森林は緑のダム、と言われているゆえんでもあります。水質浄化では森林は水質を中和し、ミネラルや有機成分を付加します。山の水がおいしいのもうなずけるところです。 (2)の表面浸食防止では、森林の土砂流出防止量は年間五十億立方メートルで、東京ドームの四千杯分にもなります。表層崩壊防止では、森林の土砂崩壊防止面積は年間九百六十平方キロメートルで、東京二十三区面積の一・五倍に相当します。緑のダムには、水源のかん養に加えこのような働きもあるのです。 (3)の二酸化炭素吸収では、森林の二酸化炭素吸収量は年間九千七百万トンで、自家用乗用車からの排出量の約七割に相当します。 では、身近なところで本県の森林面積で換算してみますと、一年間の森林の多面的機能の評価額は一兆千八百億円となります。この額は一日当たり三十二億円に相当し、一人当たりでは一年間に約五十八万円(一日当たり約千六百円)となります。 私たちは、森林からの多大な恵みなくしては一日たりとも生活が成り立たないことに感謝すべきでしょう。 日本列島は、その構造上の宿命を負っています。ほぼ中央を縦断している脊梁(せきりょう)山脈によって二分され、急峻(きゅうしゅん)な地形は一気に日本海・太平洋へと駆け下っています。仮に国土の七割におよぶ森林がなかったと想定しますと、瞬く間に日本列島は砂漠と化してしまうでしょう。また、台風の通り道となっている日本列島にあって、森林は屏風(びょうぶ)の役割も果たしているのです。台風によって森林に被害が発生することは常となっていますが、そのことによって日本列島は守られていることに感謝しなければならないのです。 (上毛新聞 2002年5月26日掲載) |