視点 オピニオン21
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パーソナリティー 久林 純子さん(高崎市貝沢町 )

【略歴】高崎女子高校、国学院大文学部卒、県立女子大大学院日本文学専攻修了。ラジオ高崎アナウンサーを経て現在フリー。「温故知新・老舗めぐり」「どこ吹く風」などを担当。県観光審議会委員、高崎経済大非常勤講師。


子育て

◎生きる原点ここにあり

 三カ月になった息子を連れてお出かけする機会が増えた。育児書などに「一日五分程度の外気浴から始めよう」と書いてあるが、私はいきなり自分の仕事や用事を済ますのに連れ歩くことから始めてしまった。取材だったり、パーティーだったり。だからだろうか。

 よく「こんなところに連れてきて大丈夫?」

 と非難がましく言われる。とはいえ、息子はご機嫌で、加えてどこへ行っても人気者。「赤ちゃんにしてはしっかりした顔立ちねぇ」とか「ハンサムくんねぇ」。お世辞とはわかっていてもうれしいもので、早くも親ばか。

 子連れというだけで周囲が優しくしてくれることが多い。大抵は順番を早くしてくれたり、荷物を持ってくれたり、逆に息子を抱っこしててくれたり…。これらが積み重なると、「子連れだから良くしてもらって当たり前」と思い上がりがちだが、優しくしてくれるのは個々の好意。母親としてその辺の甘えはきっぱり捨て去りたいもの。自覚を持っての子連れ外出を心がけたい。

 それにしてもこれほどまでに自分を必要としてくれた人間がかつていただろうか? おっぱいをあげて抱っこしてオムツの世話をする、その密着具合は少々エロチックな(?)息子の私への要求に、自分のすべてを投げ打ってこたえる毎日。正直、子育てがこんなに大変だなんて思ってもみなかった。深夜に及んだ仕事の方が楽勝でした。「三食昼寝つき」だと思っていた専業主婦への偏見も修正させていただきます。でも、いかに大変でも息子の笑顔がすべてを帳消しにする。子供ってすごい。

 おかしなもので、今までは仕事にはどん欲でも生きることにはさほど興味がなかった。結構粗末に生きてきた。でも今は懸命に生きている息子のおっぱいのために食事に気を配り、将来成長した彼が寂しい思いをしないように、長生きをしてきちんと家庭を守らなくてはとガラにもなく考えるようになった。家族と共に過ごすという当たり前の幸せに今ごろ気付いた証拠なのだろう。生きる原点がここにある。

 さて、あちこち連れ回される息子は、とうとう両親の新婚旅行にまで付き合わされることに。パスポートを取っていよいよハワイへ。次回は子連れ旅行珍道中の報告ができるかもしれない。

 育児書や周囲の意見に縛られて「こうしなければいけない」「これはしてはいけない」と考えてブルーになっているお母さん、少々不良ママでもいいじゃないですか。お母さんが生き生きしていれば、きっと子供にもその波動が伝わるはず。少しぐらい家のことをサボっても大丈夫。それでぐだぐだ言う亭主へはパンチだ!! さぁあなたも、「子供を連れてどこまでも」「家事を捨てまちへ出よう」!

(上毛新聞 2002年5月25日掲載)