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福祉住環境コーディネーター 松本賢一さん(新町 )

【略歴】高崎高校、早稲田大学卒。セイコーエプソンに勤務していた間、エプソンドイツ(デュッセルドルフ)に出向。89年、家業を継ぐためマツモト家具店に入社。00年度新町商工会青年部長。新町商店連盟理事。


実情に合うよう修正を


◎福祉用具の貸与

 介護保険法が施行されて、二年が経過しました。この制度にかかわる問題点や改善点について、さまざまに議論が交わされています。少子高齢化が急速に進んでいるわが国においては、介護を要する高齢者を社会的に支えていく仕組みの充実が重要な課題であることは、言うまでもありません。したがって、介護保険制度について、利用者はもちろんのこと、サービス提供者も含め、さまざまな観点からの議論が活発に行われるということは良いことだと思います。

 私は、この制度のもとでの在宅サービスのうち、福祉用具や住宅改修などに関連したサービスを取り扱っております。福祉用具については「購入」と「貸与」の二つのサービスがあります。利用者の便宜と社会的な公平性に配慮して、利用できる範囲が次のように項目列挙され限定的なものになっています。

 「貸与」(つまり使用料が月払いで、必要な期間のみ使用し、不用になったら返す方式)については、車いすおよびその付属品・特殊寝台およびその付属品・じょく瘡(そう)予防用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・痴ほう性老人徘徊(はいかい)感知機器・移動用リフトとなっています。

 契約の期間は一カ月以上であり、「貸与」の場合は「購入」と違い、利用者と事業者との間に継続的な契約関係が発生します。したがって、その使用期間中に、さまざまなことが起こります。利用するのは高齢者ですから、体調を崩して短期間、場合によっては長期間入院することもあります。

 また、入退院を繰り返すこともあります。福祉用具の貸与を利用される方には、そういう事例が少ないとは言えません。介護保険では、在宅の方にサービスを提供することが前提ですから、入院した方は介護保険でのサービス提供対象者ではなくなります。したがって、貸与されている福祉用具は介護保険の給付対象とならなくなります。そこで、すぐに利用者のもとから福祉用具を引き揚げることになります。

 しかし、核家族や老々介護が多い現状を見ると、家族一人が入院しているうえに、福祉用具を返還し契約解除の手続きをし、また、退院してくる時にはそれに備えて、再度貸与を受けるために契約をし、納品に立ち会わなければならないわけで、それは家族にとってかなりの負担であろうと思います。

 利用者の医療保険対象期間と、介護保険対象期間との境界に問題が生じるわけです。この場合、入院が短期間だと予想される場合などは、利用者の便宜のために、サービス事業者が無償で貸与を継続することがあります。

 この点、福祉用具貸与利用中に入院した場合、最初の一カ月間は、継続して介護保険の給付対象とするなどということはできないでしょうか。介護保険制度の趣旨が、慣れ親しんだわが家で自立的な生活を送ることをサポートすることであり、その在宅サービスの一つの柱である福祉用具貸与サービス事業の利用促進のために、こうした部分は可能であれば修正していくべきであると思います。


(上毛新聞 2002年4月29日掲載)