視点 オピニオン21
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造形作家 森竹巳さん(太田市菅塩町 )

【略歴】東京芸大大学院修了、上毛芸術奨励賞など受賞多数。太田市役所や太田高、館林・彫刻の小径などに作品設置。筑波大芸術学系助教授、モダンアート協会会員、日本デザイン学会会員。



良い展覧会


◎感動を呼び起こしたい

  「太田市現代美術展」は、昨年暮れの開催で三回目になる。この美術展は、地方の小さな町であっても良質な展覧会を開くことができる―という一つの試みでもある。大きな特徴は、作家集団と行政とがタイアップしている点や、市民ボランティアが多数参加している点である。

 この展覧会を実現するまでにはいろいろな条件が必要とあって、かなりの時間を要した。美術館での主催事業は別として、これまで行政主催や作家たちによるグループ展は、県内各地や周辺地域でも数多く催されてきている。そのこと自体は芸術文化的すそ野を広げる意味で悪いことではないが、真に良質なものとなると極めて数少ないような気がする。ここで言う良質なものとは、形式と内容がある程度の水準を保ちながら、程よいバランスを保っているということである。

 それでは良い展覧会とは、魅力的な展覧会とは、一体どのようなものなのだろうか。思いつくままあげてみる。まず良質な作品が数多く見られること、バラエティーに富んだ作品が見られること、斬新な作品が見られること、話題性のある作家の作品が見られること等々、まずは作品が前提となるが、それだけではない。会場のスペースにあった作品の大きさ・点数であること、会場構成が良いこと、パンフレット等の印刷物や看板などが整っていて、デザイン的にも優れていることなど、それらが複合してはじめて良い展覧会が成立する。

 そのためには、ある程度の予算をかけなくてはならない。従って作家同士のグループ展では、大きな会場での開催は予算的に実現不可能となる。そこで行政とのタイアップを模索したわけである。

 そしてさらに加えれば、展覧会自体の明確なコンセプトである。私たち実行委員会は、地域の人たちにとってどんな内容の展覧会が望まれているのか、また必要なのか、十分に検討した。その結果が「太田市現代美術展」なのである。おかげさまで、これまでの三回とも多くの市民や県内外の観覧者に高い支持を得ることができ、太田市の展覧会として定着しつつある。

 昨年の五月には、草加市の独協大学で開催された自治体学会でのシンポジウムにパネリストとして参加し、作家・行政・市民がタイアップしてつくり上げる展覧会としての「太田市現代美術展」について報告してきた。そこでの話し合いの中で、この種の展覧会は出品者の人選が重要であること、綿密な計画と実践力が必要であることが共通理解された。そして、打ち上げ花火的な一過性のものに終わることのない継続性が望まれる、との意見が大半を占めた。

 私たち実行委員会の理想とする展覧会とは、施設や予算の点でまだまだ隔たりがあるものの、ないものねだりはこの際脇に置き、与えられた条件の中で最大限、知恵を働かせて、地域社会の人たちが感動するような展覧会を開きたいと思っている。今年も十二月に「第四回太田市現代美術展」を計画している。“乞(こ)うご期待”というところである。




(上毛新聞 2002年4月25日掲載)