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◎保険きかない治療法 「あれ〜、なんか変だなって思ったらメガネがないじゃん。ど〜したの?」 「えへへ、実はね、レーザーで治療したんだ。メガネいらなくなっちゃった」 「つうことは、よく見えてるってこと?」 「ウン、両目とも1・2になっちゃった」 「へえ〜、今までどのくらい悪かったの?」 「0・05。お前みたいに、目だけはいいやつには分かんないだろうけど、なんか生き返ったって感じ」 「相変わらず大げさなやつだなぁ」 「いやいや、そんなことないよ。温泉なんか行っても、見えてないから結構怖いし、寒い所から急に暖かい所に入ると曇っちゃうし、汗かくとメガネに垂れちゃうから、年中ふいてなきゃなんないし…」 「まあその程度は我慢しなくっちゃ。オレのかわいそうな人生に比べたらアマイよ」 「お前の人生がどのくらいカワイソ〜でクライのか分かるけど、目が悪いってのは命にかかわるんだぜ」 「またまた、言ってくれるじゃない」 「だってさ、阪神大震災覚えてるだろう? ほとんどの人が寝ている時に、いきなりグラっときたんだぜ。運良く頭の上じゃなくて、すぐ脇にたんすが倒れてきたとするじゃん。うわっ、なんだこりゃって起き上がる。電気をつけるが停電。真っ暗の中逃げようとする。そこでオレはメガネを探す。アレーッ、メガネがたんすの下敷きになってる。マズイ、何も見えない」 「なるほど。それはかなりカワイソ〜な状況と言える」 「だろっ そうなんだよ」 「だけどさ、レーザー治療ってどんなことするの?」 「目の表面にある角膜をレーザーで削るんだよ。そうすることで屈折率を変えて、像を結ぶ網膜にきちんと焦点が合うようにする」 「なんか怖そうで、しかも痛そ〜」 「ところがほとんど痛くないし、治療自体は十分程度で終わるんだ」 「なんだか良いことばっかりみたいだけど、悪いとこないの?」 「あるよ。四十歳を過ぎて、近視・乱視を治療して視力が良くなると、急に老眼が表面化するんだ。それと、治療代が高い。四十万円くらいはかかる。保険診療できないんだ」 「それっておかしくない? なんてったって命にかかわるのにさ」 「オレたち中小企業のサラリーマンが加入している政府管掌健康保険は毎年赤字。平成十二年度は、千五百六十九億円だった。これだって減ったんだ。十一年度はおよそ倍の赤字額だった。つまり財源がない。だけど、視力0・1未満は病気と思う。労災や厚生年金の障害給付に該当するんだぜ」 「そうだ そのとおり。そうなりゃあオレだって治療を受ける あれっ、ばれちゃった? オレ、コンタクト。目も悪かったんだ」 (上毛新聞 2002年4月19日掲載) |