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◎政治浄化に全力を投入 『田中正造 足尾鉱毒事件に挑む』が二月二十日夜、NHK『その時 歴史が動いた』で放映されました。私もなにくれと関係したので、身を入れて見ていました。終わると「見たよ」「よかったね」「あれではダメだ」など、感想やら意見やらの電話がありました。 数日して、製作担当の方から「おかげをもちまして番組も非常に好評でして、製作を担当した者として喜びにたえません」の礼状とビデオが送られてきました。副題に『環境保護運動 ここに始まる』とあるのを見て、正造をエコロジスト的な面でクローズアップしようとしたことが分かりました。立松和平さんが、足尾の荒廃地に植樹運動をしている話と、「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」の正造の言葉でまとめているのも、成功していたと思いました。 だが、正造には取り上げてほしい思想や行動が他にたくさんあるので、期待外れに感じた点もあります。一例を挙げれば、川俣事件で負傷させられた農民の血染めのシャツが映りましたが、不十分な説明で、次に移りました。このシャツの件は前橋の法廷で扱われ、正造が抗議のあくびをしたために投獄された「あくび事件」になります。巣鴨の監獄で聖書を読み、正造は非戦・無戦を主義とし、軍備全廃を唱えるにいたります。テロや報復戦争批判、国連による解決を示唆する正造が見えてくるのです。 さらに、国会で政府を追及する場面がありましたが、そこからは私たちがやはり普及に努めている正造の「天の監督を仰がざれば凡人堕落 国民監督を怠れば 治者は盗を為(な)す」の至言が紹介されると良かったのです。視聴者がいま一番正造に共感を覚えるのは、政治浄化に全力を投入した点だろうと思うのです。政治家と官僚、政治家と秘書をめぐる金銭問題にあきれ果てている国民は、正造のこの一喝に留飲を下げ、政治にあらためて関心を高める一コマたり得たのに、まったく惜しいことをしたと、正造を多少でも知る人は、皆がそう思ったことでしょう。 ところで、四月の末には恒例の行事が予定されています。二十八日には「春の植樹デー」が、渡良瀬川最上流の足尾山地大畑沢、緑の砂防ゾーン(銅山製錬所の上手)で開かれます。午前九時半集合になっています。いつも立松さんが来ます。森林管理署も木を用意したりして、数百人が参加します。シカに食われないように、枯れてしまわないようにと、肥料や土や支柱など配慮して植えてきました。「足尾に緑を、渡良瀬に清流を」の旗が翻ることでしょう。最近の調査では、まだ毒があるようですが。軍手、昼食持参で参加しませんか。 二十九日には、最下流の利根川合流点に位置する埼玉県北川辺町で、廃村阻止住民運動勝利百年記念フィールドワークが、午前九時半から新古河駅前で行われます。 (上毛新聞 2002年4月13日掲載) |