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◎学ぶことを発見する わたらせ渓谷鉄道(旧・足尾線)にお乗りになったことがあるだろうか。そのほぼ半ば、渓谷がつかのま平らなところにさしかかり、ゆったりとした姿を見せるあたりが「花輪」である。 現在、地元・花輪の方たちと「渡良瀬学」という勉強会に取り組んでいる。小寺知事が推奨する「一郷一学塾」の活動としてである。二月は、地元勢多東村中学校の生徒たちとともにマップ作りにチャレンジした。下調べと準備は桐生在住の庭山由紀さん。地図の作製を指導する。地元コーディネートは諸岡健一さん。「渡良瀬学」代表である。当日は一郷一学塾講師・森山亨さんも参加、花輪一区の区長・星野昭一さんをはじめ、地元の先輩たちも集まってきてくれた。 今回の企画には、いくつかのルールを設けた。まず、マイマップであること。有名な場所や観光ポイントの網羅ではなく、たとえば「この木でよくセミをとった」などという自分の記憶をたどって、白地図上に記録していく。いわば「主観的な地図」である。もう一つ、わからないこと、疑問を抱いたことなどもそのまま記録すること。つまり「問いかける地図」にすることだ。 銅山(あかがね)街道として、さまざまな調査・記録の対象となってきた流域を、あらためて自分のために見つつ歩くのである。年表や公式の地図には出ていない「記憶」に出合うために、まず自分個人の目や耳を準備しておくのである。 二班に分かれた。 銅蔵の残る高草木家。路傍の石は江戸後期の庚申塔(こうしんとう)。辻のお地蔵様は手厚く祭られ、くまのぷーさんのよだれかけをしている。御りょうさんとよばれる神社の屋根瓦に不思議な形(一輪のバラのかたち)の瓦飾りが付いているのを発見したのは、双眼鏡持参の森山さんだ。中学生たちは、立ち止まり思案しながら、またある時は先頭に立って自分の村を歩いている。庭山さんは、もう一班とともに歩いた感想を「東中学校の生徒の自主性に感動した」と報告した。 発見の旅をしながら、村の中のごみを彼らは自主的に拾って歩いた。地元の古いうどん屋さんのインタビューを試みた。地元の若者たちの好奇心にこたえて、たくさんの資料がうどん屋さんの座敷に広がった。 冬とは思えない暖かな一日。ゴールは花輪小学校。二○○一年三月をもって廃校となった。一九三一年からここにたつ。今回参加した中の七十代の方は、かつて新築の校舎の廊下を磨いたという。そして地図と格闘した中学生も、在校時には同じ廊下を磨いた。ここは、同じ場所で違う世代が同じものに向き合う、そんな今回の試みにはふさわしい「教室」である。 思い出のかけらや疑問の数々、これらを整理して、三月の「渡良瀬学」では村の先輩たちの話を聞いた。 「学ぶことを発見していく」試み、まずは心の中の小さな冒険をしながら、花輪地区の胸を借りて、ここに始まったばかりである。 (上毛新聞 2002年3月30日掲載) |