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◎今年も提灯の明かりを 「二〇〇二年上州の夏祭り実行委員会」が今月八日に立ち上がりました。今回で第四回になります。 一九九九年、県庁舎が新しくなり、それに伴う周辺整備の一環として県庁前に広場ができました。「県民一人一人が自分たちの広場だという意識をもって使っていける広場にしたい」「一度は県庁前の広場に来てもらいたい」。そう私たちは考え、そして多くのボランティア、行政の人たちとともに第一回の「上州の夏祭り実行委員会」を設立しました。祭りを通し、より多くの人に自分たちのまち、周囲のまちへの関心を高めてもらいたい。群馬県の風土をあらためて見つめなおし、それぞれの市町村がこの祭りをきっかけに自分たちのまちの文化・歴史を多くの子供たちに伝えていけたらという思いでした。 本来「祭り」とは土地土地の風土や信仰の中で自然発生的に生まれ、受け継がれてきているものです。新しい祭りを簡単につくることはできません。実行委員会は毎日が試行錯誤で、夜が明けるまで議論しつづけたこともありました。自分たちのできる範囲、「身の丈」を合言葉に祭りの内容を考えました。 群馬県内七十市町村。それぞれのまちの伝統芸能・祭り・物産などを多くの人に紹介しつつ、また新しいものも取り込んでいければという気持ちで協力や参加を呼びかけました。ですが、一足飛びに七十市町村のすべてをというわけにはいかず、せめて市町村の名前の入った提灯(ちょうちん)だけでも借りようということになりました。役場や商工会等で借りられる提灯を探してもらい、各地の土木事務所に集め、さらにそれを土木事務所の人たちに県庁へ運んでもらいました。一つ一つ形の違う提灯がさまざまな人たちの手を経て集まり、祭りの当日、県庁の前に明かりをともしました。伝統芸能を披露するために遠くから参加した出演者たち。たくさんの野菜を持ってきてくれた出店者。あいにく祭り当日は土砂降りの雨に見舞われましたが、感慨深いお祭りになりました。 二〇〇〇年、第二回の上州の夏祭りでは参加を呼びかけるため、実行委員会のメンバーで手分けをして七十市町村を回りました。市役所、役場へあいさつをして歩くなか、提灯の話が何度となく出てきました。祭り自体は知らなくても「ああ、あの提灯を貸した」と会話が弾みました。雨にぬれ、風に飛ばされ破れてしまった提灯もありましたが、「大変な日だったね」と笑って答えてくれる担当者の方もいました。 二〇〇一年の実行委員会もやはり七十市町村を回り、そして多くの人の協力をいただき、また励まされました。お祭り当日は六万人の人たちが県庁前の広場に集まり、県庁前の並木通りも一部歩行者天国となってにぎわいを見せました。 実行委員会は一年で解散します。春には次の夏を目指して新しい人たちの手でまた立ち上がります。さらに多くの人たちがさまざまな思いでこの「上州の夏祭り」を育ててくれればと願いつつ、二〇〇二年の夏も県庁前の広場に提灯の明かりがともることを楽しみにしています。 (上毛新聞 2002年3月28日掲載) |