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◎貧弱な本県の公的支援 生まれてきた子どもに障害があると分かった時の親の気持ちは、想像がつくと思う。こんなとき、先進国、例えばアメリカ合衆国では、ケースワーカーが親を訪れて、障害についての知識、具体的な育て方―ダウン症児は反応が鈍いので、部屋には明るい色を使おうなどと実に詳細に―、社会的な保障とともに、障害児への早期からの療育を受けられることが伝えられる。 知的障害者は、早くからの療育を行うことで障害が軽減されるということが分かり、一九六〇年代末に『障害児早期教育促進法』が連邦法として制定され、どんな地域に住んでいようとも、こうした療育が受けられる。こうしたケアや療育は、親の精神的なショックからの立ち直りにも有効である。 日本でも、地域によっては保健師の訪問や、民間の機関(公的ではないので親の金銭的な負担も大きい)による早期の療育が行われるようになってきているが、地域的な格差が非常に大きい。とりわけ本県では他県と比べても立ち遅れが目立つ。 障害児が多く通入院する県立小児医療センターは、総合病院ではない。ダウン症は知的障害だけでなく、心臓をはじめ、肺、消化器、目、耳などの合併症を持って生まれてくる割合が高いが、同センターは単科なので、いくつかの科目の病院を探し回らなければならない(他の都県まで通院している人もいる)。 加えて、ケースワーカーや保健師らの数が足りず、ダウン症などの比較的「軽い」といわれる障害児へのケアまでは手が届かないのが現状である。静岡や埼玉などの小児医療センターでは、スタッフの力でダウン症児の発達訓練を月二回無料で行っているのに比べると、貧弱であるといわざるを得ない。 保健福祉事務所の保健師による障害児とその親に対する指導も、以前に比べると進んできた。しかし、県内でも市町村や管轄地域による格差が大きい。例えば西毛地区でも、藤岡市や富岡市、吉井町などは、保健師の家庭訪問がしばしば行われ、また保健師が中心となって親子の集まりを企画・実施している。 一方、高崎市(高崎保健福祉事務所)では家庭訪問もほとんど行われず、問い合わせをしてもはかばかしい返事は返ってこない。高崎市役所も同様で、たらい回しにされて、結局児童相談所を紹介されるだけである。 上述のアメリカのように、知的障害児に対する療育は、親の希望によるだけではない。障害が軽減されれば、普通学校へ通えるようになるし、将来の仕事の範囲も広がって、障害者雇用の道も今よりも開けてくる。アメリカなどでは、ロビイストや俳優などとして活躍しているダウン症者もいるが、そうすれば障害者年金の軽減にもつながる。現在、作業所や授産施設はどこも定員オーバーで自宅待機者も少なからずいるが、こうした施設の形態や経営も変わってくるだろう。 障害児・者に対する公的支援は、障害者の社会参加を進めるための、十年、二十年後を見通した計画を立ててほしい。 (上毛新聞 2002年3月19日掲載) |