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◎「上毛三山」が際立つ 歌は世につれ、世は歌につれ―。「はやりうた」とも言われる大衆的歌曲。演歌低迷の世相にもかかわらず、新しい歌謡曲は日々誕生している。ここでは「ぐんま」に題材を求めた“ご当地ソング”に触れてみたい。 リリースされた作品は数多いが、登場する舞台は一口でいうと「上毛三山」が際立つ。中でも名山「赤城」はダントツだ。いで湯「伊香保」を抱え、情緒あふれる「榛名」、そして花と紅葉に優しさを映し、奇勝・奇岩で知られる「妙義」。この三山は民謡、童謡・唱歌、校歌などのジャンルにも詠まれている。 「赤城」では、江戸末期の国定村(現佐波・東村)を拠点に、博徒(ばくと)として鳴らした「国定忠治」にまつわる伝承による映画や演劇が媒体してヒットした歌がある。東海林太郎でおなじみの「泣くなよしよし/ねんねしな」の歌詞で始まる『赤城の子守唄』(詞・佐藤惣之助、曲・竹岡信幸)は、一九三五(昭和十四)年の製作。「男心に男が惚(ほ)れて」の『名月赤城山』(詞・矢島寵児、曲・菊地博)も、なつメロとしてカラオケファンに定着している人気の演歌だ。本県への転勤族が、まっ先にマスターする歌だという。 その他『忠治赤城落ち』『御存知赤城山』『赤城鴉(からす)』『上州しぐれ』や北島三郎が歌っている『流転笠』なども。これらは総じて男のにおいがプンプンの“股旅(またたび)”調だ。イメージが異なるものでは、私が作詞の「赤城の山から吹いてくる/ヒュルルンヒュルルン/からっ風」の『愛のからっ風』(曲・服部良一、唄・由起さおり=県製作)、『母ちゃんは赤城山』(曲・笠見実、唄・神尾美幸)や友人の高坂のぼるさん(前橋在住)が、白樺林などを盛り込んでつづった駒あき子さん(前橋出身)がテープ化の『ちぎり宿』(曲・千木良政明)などが。 コロムビア音楽出版が提供してくれた資料を一読すると、歌の形態はさまざま。「赤城」にかかわる、その数は約五十曲にも上る。それでは「榛名」について述べたい。女優・高峰三枝子が吹き込み、四○年に世に出た『湖畔の宿』(詞・佐藤惣之助、曲・服部良一)は、さんぜんと輝く名作だ。 「山の淋(さび)しい湖に/ひとり来たのも/悲しい心(以下略)」を刻んだ歌碑を、県が平成元年、湖畔の高台に備えて記念公園を開設した。榛名湖畔にアトリエ建設を夢見た竹久夢二の、ある一面をテーマに、私が手がけた『夢二模様』(曲・千木良政明、唄・原けい子、白鳥みづえ)は、榛名路と伊香保温泉を彩色している。 さて「妙義」では『哀愁の妙義湖』(詞・茂木徳太郎、補詞・大澤陽央、曲・中島慎二、唄・三島敏夫)が代表される。茂木さん(松井田)の疑似体験の一コマを詠んだとみられる、素晴らしい叙情歌謡だ。 (上毛新聞 2002年3月14日掲載) |