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ぐんま天文台観測普及研究課長 
倉田 巧 さん
(高山村中山 )

【略歴】沼田高校、群馬大学教育学部卒。昭和54年から吾妻郡、沼田で小・中学校勤務。平成7年より県教委指導主事として、天文台建設に携わる。平成11年より現職。


数学と自然の法則

◎森羅万象を解く知識

 まず、遠くの宇宙の星の中で合成される元素と、地球のそばの星でできる元素には違いがあるのでしょうか。結論から言えば、全く差がない、ということです。では、なぜなのでしょうか。それは、向こうの宇宙と、こっちの宇宙を支配している物理法則が同じだからなのです。ニュートンやガリレオの法則は、向こうでも成り立っているのです。格好よく言えば、物理法則や数学は表現方法の違いこそあれ「普遍」なのです。

 物理法則は、一つ一つを見ると非常にシンプルで、分かりやすいものです。一例として、太陽系が太陽と地球だけなら、非常に単純な式でそれらの動きを求めることができます。しかし、実際には多くの惑星や衛星などがあり、勘案すべき要素が多くなっているので、複雑に見えているだけなのです。

 次に、人間はいろいろな元素からできています。水素以外の元素は、何世代か前、地球のそばにあった太陽の数倍以上大きい星の中心付近でつくられました。特に鉄などは数十億度というしゃく熱の中で合成されたのです。その巨星が「超新星爆発」を起こす時、多くの放射性元素を合成しながら宇宙空間に多様な元素をばらまきました。これが固まって太陽系をつくったわけです。別な考え方をすれば、人間も昆虫も空気も岩も、数十億年前はしゃく熱の星の中にいたのです。たまたま、ある元素は人間を形成するのに使われていますが、別の元素は地球の奥底や冥(めい)王星の一部にいることもあるわけです。しかし、みな一族です。

 宇宙を支配する普遍法則は、実は私たちの細胞にまで影響しています。未知の元素というのは基本的に存在せず、地球上にある元素で他の宇宙もできているというわけです。元素の化合割合を考えて、未知の合金的な素材をつくっている高等生物はいるかもしれませんが、物理法則が普遍ですから、できるものも同じになるわけです。

 英語が世界の公用語のように言われていますが、私はそうは思いません。私のつたない英語では細かいニュアンスを伝えることができません。しかし、数学と自然の法則だけは、通訳なしで、細かいところまでどんな外国人にも通じます。間違いなく、英語やフランス語以上に世界共通語なのです。

 どんなに世の中が変わろうとも、どこの宇宙に行こうとも、絶対に信用できるものが数学と自然の法則です。若い人たちには、こういう普遍性のある知識をしんどいですが、身に付けてほしいのです。まだ、発見されていないものも多くありますが、森羅万象がこれらの法則に支配されている以上、これらの知識でほぼ説明が付くのです。どこの宇宙でもほぼ「地球なみ」であるという結論も、それが理由なのです。


(上毛新聞 2002年3月11日掲載)