視点 オピニオン21
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NPO法人・環境ネット21理事長 
六本木信幸さん
(伊勢崎市中央町 )

【略歴】桐生高、明治大商学部卒。76年、ダイエーに入社、10年間勤務する。群馬合金専務を経て、89年からグンゴー社長。環境ネット21はNPO法人として、県内第1号の認証を受ける。


子供と食事

◎食べる大切さ教えよう

 「食べることは生きること」―こんな大切なことを、現代社会は子供たちに伝えていくことを忘れてしまったのではないでしょうか。動物の習性を分析してみても、一人前になることは一人で食べて生きていけること、と教えています。

 クマは子グマが一人で川の魚を捕れるようになるまでは、温かく見守って指導をします。カンガルーは授乳から草を食べるようになった瞬間に、袋から子供を出すといわれています。ツバメは虫などを口の中で団子状にして与えながら、羽根の成長をチェックし、南の地へ渡る出発日を意思決定していく。育児書も、先人の教えもないのに、子供たちが大自然の中で健全に生きていくための条件を、本能的に知っている。

 それに引き換え、私たちは余りある情報を享受しながら、それを子供たちに正しく伝えていない。食べることの大切さ、和食の素晴らしさを、今どれほどの日本人が感じているのだろうか。小学生の三割が朝食を食べてこないという事実、食べてくる小学生も、コーンフレークや菓子パン、そしてジュースなどで済ましては、朝食というよりおやつに近いメニューではないでしょうか。

 ライフスタイルが欧米風になることは否定しないし、戦後、体力の向上に貢献したことは確かです。しかし、日本人の内臓の大きさや腸の長さは、弥生時代から全く変化していないという。欧米人に比べて腸の長い日本人は、ヒツジやウシと同じく、穀類をゆっくり消化し、エネルギーとして吸収していくメカニズムを持っているそうです。

 そこで、私たちの食卓をもう一度見直してみませんか。日本古来のおしんこ、みそ、しょうゆには、発酵という伝統の技術が生かされています。お米には梅雨や暑い夏を耐えて秋に実を結んだエキスがあり、旬の野菜には自然の恵みのすべてがミックスされて配合された、その季節を生きるためのエネルギーがあります。

 そうした自然に培われた食卓を目の前にした時に、本当に心から自然の中に生かされている自分に気づき、「いただきます」と、感謝の気持ちを込めて、あいさつを交わすことができるのです。子供たちに、日本人の器用さを示す文化のバロメーターである箸(はし)の使い方を正しく教え、迷い箸、ひき箸、はたまたひじをついて食事をするようなことがないように、しっかりとしつけをしていくことが、大切ではないでしょうか。食事とは人を良くすること、と文字で表現されているように、この時間帯に、いかに楽しく、夢のある話題を提供し、子供たちに、情操教育をしていくかが大人の責務といえると思います。

 最近、キレる子供が増加していると聞いておりますが、その調査結果からジャンクフードを一人で食べて、多量の清涼飲料水を飲んでいるというデータを知りました。キレる子供への対応は、心の教育だけではないようです。次回はこのキレる子供の原因について、“心の教育”以外の問題点から、持論を述べてみたいと思います。


(上毛新聞 2002年3月1日掲載)