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群馬創玄書道会会長 
高草木 恒彰さん
(大間々町大間々 )

【略歴】桐生高卒。42年間、大間々町役場に勤務する傍ら、文化勲章受章者、金子鴎亭氏に師事し書道を追究する。県書道協会理事。県書道展運営委員・審査員。二葉書道会主宰。


こだわり

◎自筆で気持ちを伝える

 最近はIT(情報技術)の普及に伴い、手で文字を書くという作業が少なくなってきております。「書」を愛好し、研究する私たちにとっては寂しい限りです。年賀状などちょうだいしたのを拝見すると、ワープロを駆使し、絵入り、写真入りなどさまざまです。個性のあるものが、豊富に見受けられました。

 さらにあて名書きまでワープロで打ったものが多くありました。儀礼化した傾向も感じられました。新年のあいさつ状ぐらいは、全部とは言いませんが、自筆で書いてもらいたいものだ、と痛感した次第です。筆跡から相手の心理状態や、健康状態まで推測できるのは楽しいものです。

 「この忙しい時期にそんなゆとりなんてないです」と言われればそれまでですが、無機質な活字だけが目立ち、なんとも寂しい限りです。ちなみに小生の賀状は、自筆・毛筆にこだわっております。ある年、一度だけ印刷をしたことがありました。友人から「筆を持つあなたが印刷文字とは何事か」と叱責(しっせき)されました。以来、自筆にこだわっています。細かい文面は書きませんが、今年も元気だよ、という印に心をこめて毛筆で書いております。

 「今年の賀状は温かみがあったよ」「元気な書体だったね」などと聞くと、いくらかでもこちらの気持ちが伝わったかなと思い、やはり毛筆にこだわってよかったなと、われながら自己満足をしています。

 身近なことですが、最近「ら」抜き言葉が公然と使われております。文法的に正しいのかどうか、勉強不足で分かりませんが、私たちの年代ではこういう国語の教育は受けた記憶がありません。美しい日本語、正しい日本語は国の文化であり、聞いていて気持ちが良いものです。

 本県は自動車保有台数が多く、それに伴い道路も整備されてきました。その標識の文字が、カタカナ文字やローマ字などで書いてあったらどうだろう。読み取れないうちに通り過ぎてしまった。こんな経験をされたことはありませんか。

 例えば「前橋」「高崎」方面などと漢字標記の場合はどうだろう。おそらく私たちは一目で判読できます。漢字利用の効用の一例です。

 学校教育の現場に、第二公用語として英語を取り入れていく方針のようですが、確かに世界を考えると、必要かもしれません。しかし、それ以前に日本民族として世界に誇れる漢字文化を学ばせてほしいと思います。

 ワープロからの変換文字で、読み方は合っていますが、漢字の文字が違う文章を目にすることがあります。読解力、書き方の低下はいなめません。



(上毛新聞 2002年2月22日掲載)