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◎利用者層増やす努力を 市民と行政の協働とはいえ、市民が行政に直接参画するのは難しい。従来の例では、行政に不満をぶつける陳情であり、これでは局地的利益改善要求の域を出ず、協働のイメージからはほど遠い。 桐生市で設けられた市民の声の会は、協働の素地となる媒体づくりのひとつであると思う。平成十三年度は、グループ研究方式となったので、私のグループでは、まちづくりにおける交通問題のひとつとして、桐生を走るバスを考えてみることにした。 「おりひめバス」は、東武バス撤退に伴い生活交通維持の目的で、四年度から桐生市が運行する代替バスである。代替バスは路線開設にあたり、利用者となる住民による協議会の設置が義務付けられており、桐生市でもその要望が最優先された。 生活交通とはいえ、交通弱者救済の福祉交通である。運行は市内のタクシー事業者に委託され、現在十一台のバスが市内くまなく、八路線を一日約二千キロ走り回っている。当初は対距離運賃制であったが、十一年春から市内の小学生以下と市の発行するパスを持つ七十歳以上の人、身障者は無料である。無料化と路線の増加により、年間利用者も高齢者を中心に現在約四十五万人に増えている。市民一人あたり年間四回乗る計算である。 調査を進める中で、次のような問題が浮かび上がった。超高齢化が進展する中で、交通の自家用車依存はその度合いを急速に増やしており、桐生市も自動車のための道路整備に余念がない。しかし、現在は車に乗れる人たちも、いずれは年を取り乗れなくなる。未来の若い市民が足代わりをできるであろうか。今から社会資本のひとつとして、公共交通の重要性を再認識する必要がある。市民が公共交通機関の必要性を認識し、支える仕組みづくりに同意することが大切である。 路線バスに関する規制緩和により、地方バスはさらに厳しい環境となる。現状では、営利事業として成り立たない以上、補助金の打ち切りとともに路線廃止は避けられない。ただし、住民の財産として維持するのであれば、効率の良い運営が求めれる。少しでも利用者を増やし、補助金額を圧縮する努力が求められる。 それには、路線ごとの局地的視点からの対応ではなく、まちの動脈としての交通システムの総合的見地から見直し、福祉交通からコミュニティー交通への脱却により、利用者層を増やす努力が必要である。都市交通に関する専門家、関心を持つ市民の参画とともに、運行に当たる事業者自身の研究改善努力、そして行政だけでなく規制官庁の協力も重要な要素となる。 このような分野の問題では行政の限られた要員や、従来の行政協力組織だけの対応では限界があると思う。桐生市の目標である「賑(にぎ)わい織り成すまち」を実現するために、市民と行政の協働テーマのひとつとして、公共交通システムのしっかりとした確保を、取り上げてみる必要性を感じた次第である。 (上毛新聞 2002年2月19日掲載) |