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◎他人を思いやる気持ち 薬は人の体に入って作用するものであり、薬を渡す側と服用する側の双方が、薬についてよく理解している必要があると思う。薬のプロが薬剤師であり、薬局には必ず薬剤師という者がいる。しかし、そうでない場合が多い薬局・ドラッグストアがあるのも事実であり、医薬品は薬剤師または薬種商でなくては販売してはならないのに、そうでない場合が見受けられることもある。これは完全に法律違反であり、薬剤師として憤りを感じる。 最近は医薬分業(医療機関で処方せんを発行し、薬局で調剤し薬を渡すシステム)が進んできているが、これも意味をよく理解していないと、単に煩わしいだけのシステムと認識されてしまう。本来は重複投与の防止や薬についての説明を、よりよく受けられるためシステムのはずであるが、趣旨が徹底されないと、単に医療機関の中で薬を受け取るのが外になっただけの話になってしまう。また、処方せんを調剤する薬局は、患者が自由に選択・変更できることも徹底されているかは疑わしい。 薬剤師会では医薬分業の趣旨徹底を図るべく、かかりつけ薬局を推奨しているが、まだまだあるべき姿と現実とのギャップがありそうである。さらに、法的には問題なくても、モラルや良識を疑いたくなるような薬剤師が私の身近においているのも事実である。薬剤師がやるべきことや考えることは、数多くありそうである。 先日、ある小学校の学校保健委員会で、児童から「薬剤師には何が一番大切か」という質問を受けた。いろいろ考えた上で私は、生意気なようではあるが「人によって答えは違うと思いますが、私は相手のことを思う気持ちです」と答えた。薬局に来る人たちはさまざまであるが、体や精神の不調を訴えている人が圧倒的に多く、その人の立場に立って物事を考えなければ問題は解決できないから、と考えたからである。薬剤師は単に薬を渡したり、販売したりするだけであるととらえてほしくはなかったし、私自身が日々業務を行う上で、相手のことを思いながら、医療機関からの処方せんに基づき調剤をして患者さんに渡し、また一般の医薬品を販売することを心がけているからである。 物の見方や考え方は人それぞれで、絶対的に正しいとか間違っているということはない場合が時としてある。そんな時のための取り決めが法律であり、法で定めていないときのよりどころが慣習であり、社会的通念とか常識と呼ばれていたりするのだろう。人間が社会的な生活を営む以上、このようなものが存在する必要はあるのだろう。しかし、常識というものは時代とともに変化する場合があるし、慣習も長い年月を経て変わっていくこともある。法律にいたっては、人間が意識的に作るものなのだから当然変わるものである。何が大切かといえば、個々の人が良識を持つということだと思う。そして自分のことだけでなく、少しでも他の人のことを考える気持ちがあればよいのではないかと思う。このことは、別に薬剤師に限ったことではないのだが。 (上毛新聞 2002年2月13日掲載) |