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高崎周辺ダウン症児・者とともに生きる まゆの会前代表
 濱村泰明さん
(高崎市昭和町)

【略歴】前橋高校、千葉大学人文学部国文学科卒業。東京都内の出版社勤務の後、フリーランス・エディター(書籍編集業)になり、現在に至る。高崎に居住して8年。子ども3人の父子家庭。


障害者

◎厳しすぎる判定基準

 いささか旧聞に属するが、一九八一年に始まった「障害者の十年」の中間報告として、国連は「世界人口年鑑一九九一」で世界各国の障害者数の特集を行った。表1は人口千人当たりの障害者数、表2は日本とカナダの年齢別の割合を計算したもので、国によって異なるが、一九八六年前後の調査である。なお、日本のブランクの部分は障害者数と総人口から算出した。

 発展途上国では、医療の遅れによる五歳未満児死亡率の高さや、短い平均寿命から障害者数は少ないが、ベトナムの六五歳以上(老齢人口)の障害者数は日本の四倍を超える三三九人、中国でも六五―六九歳だけで一七六人と高い。これは社会主義政策などによる。これらの国と比べて、先進国の日本はなぜ障害者数が少ないのだろうか。

 一つには障害に対する基準の違いがある。例えばスウェーデンでは「階段を休まずに上ることができるか」などといったきめ細かい基準が定められている。これに対して、日本では基準が非常に厳しいことは、しばしば訴えられている老人の要介護認定への不満からも想像できよう。例えば聴覚障害者数は六百万人と推定されるが、厚生労働省の統計では四○万人に満たない。障害の判定は軽い方に抑えられ、障害者・療育手帳を所持しても、軽度と判定された場合にはほとんど何のメリットもないため、判定を受けない者も多い。

 ダウン症は先天性の染色体異常だが、小会の会員のうち半数近くは軽度の障害と認定され、また二、三歳までは手帳の申請が受けられないため、手帳を持たず無言の抗議を行っている者もいる。経済大国日本の福祉の目を覆うばかりの貧しさである。

 表中には事故や病気などの一時的な障害を含む国も多い。この場合は回復すれば障害者ではなくなるが、障害者でいる間は種々の福祉を受けることができるので、経済的・精神的な負担が軽くなる。もちろん日本では認められない。

 高齢者を障害者とすることには、高齢者自身からの反発もあるが、例えば障害者介護のノウハウを老人介護に生かすことができるなどのメリットや、福祉を総合的な面から把握することから、障害者に含めている。

 一時的にでも障害者となることや、障害者の割合が多いことは、意識の面でも重要である。日本のように障害者数が少ない国では、障害者はともすれば特殊な存在とされがちである。しかし、一時的な障害、特に高齢を障害ととらえることは、自分の問題であり、いや応なく障害と向き合うことになれば、障害は特殊ではなくなるだろう。




(上毛新聞 2002年2月1日掲載)