視点 オピニオン21
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臨床心理士 
鈴木志津さん
(前橋市天川原町 )

 【略歴】東京女子大心理学科卒。法務技官として非行少年の資質鑑別業務を担当。89年、児童相談所、小児科医院などでカウンセリング開始。96年から中学・高校でスクールカウンセラーを務める。



尊重し合える存在に

◎人間関係

 中学や高校のスクールカウンセラーの相談室は、個別のカウンセリングを希望する生徒だけではなく、おしゃべりに立ち寄る生徒も出入りします。学校内では保健室同様、評価に無関係に、生徒が素顔の自分を出せる場所として機能しており、そうしたコミュニケーションを通して、彼らの普段の生活の様子や本音を知ることができます。

 大人は子供を正しい方向に導こうとする気持ちが先に立ち、なかなか子供の本当の思いに目が行きにくいところがあるようです。生徒をサポートしていくには、できるだけ彼らの目線に立って、生活の実態や本当に望むところを理解していきたいと願いながら、日々の仕事をしていますが、そうした視点から気付いたことを、少し述べてみたいと思います。

 中学や高校生は、発達的に見ても、友人からどう見られているかに強い関心が向く時期であり、相談室でも交友関係に関する悩みが多く持ち込まれてきます。そして、多くの生徒が「友達とうまくやりたい」「皆に好かれたい」と切実に望んでいます。それは当然と言えますが、その関係のあり方を見ると、以前と少し違ってきているように見えます。

 ある生徒は、「友達とはお互い傷つけないように気を使い、神経をすり減らしている」「友達の中では本音は出せない。自分を演じていると疲れてしまう」と話していました。

 子供たちの間では、“暗いと嫌われる”“明るく人気者にならなくてはいけない”という思い込みがあり、仲間の中では深刻に悩んでいる姿は見せてはいけない、と考えているようです。常に軽いノリでその場をかわし、明るい自分を演じようとします。その結果、自分自身をじっくり見つめ育てたり、深く考えることが、不得意になってきているようです。

 また、一人でいることはかっこ悪く、いつもグループで行動しようとします。お弁当の時間やトイレまで、友達と一緒は当たり前で、いったんグループができると、どんなことがあっても、そこからはずれないように、必死の努力が払われます。

 彼らの交友関係のあり方を見ていると、表面的な印象とは裏腹に、どこか無理をしており、お互いに拘束し合っている姿が浮かび上がってきます。本来自由で、安心できる関係であるはずの、友人との付き合いが、大変窮屈なものとなることもあり、過剰に神経をすりへらし、ささいなきっかけから不登校につながっていくことさえあります。

 こうした子供たちの状況は、どこからきているのでしょうか。平均的で画一化された、理想的な子供像を求める、大人社会の価値観が反映しているのかもしれません。

 私たちは、もっと一人一人の心が自由で、先入感にとらわれず、お互いを尊重し合える存在でありたいと思います。そして、子供だけでなく大人自身も、率直に思いを伝え合える、開かれた関係を築きあげていければよいと思っています。



(上毛新聞 2002年1月18日掲載)