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◎歴史的建造物 どこの町や村にも新しい建築物とともに、古い建築物が生き続けている。大通りに堂々と構え、道を行く人の足を止める物もあれば、路地裏にひっそりとたたずんでいる物もある。 私は、多くの人たちをこうした歴史的建造物と言える建物に案内しているが、一緒に歩く人たちは「毎日、この前を通っているのに気が付かなかったわね」「中に入ると落ち着くわね」「何か懐かしいね」「昔のお父さん、お母さんを思い出すね」と異口同音に感想をもらす。 私は、高崎の歴史の一部を伝える古い建築物が数多く姿を消してしまうのを目の当たりにしてきた。北高崎駅前に素晴らしい景観をつくっていた高崎倉庫のれんが倉庫、高崎南部に威風堂々とそびえていた下和田町の日本製粉木造五階建て本館、旧高崎市庁舎など、長く市民になじまれていた名建築は、ここ数年の間に瞬く間に姿を消してしまった。考えてみれば高崎ができて以来、町の景観は建築などが壊され、また造られて変化し続けている訳ではある。 しかし、近代の町の変容ぶりは驚くほど早い。角の店が突然駐車場になったりすると、二、三年たてばそこにどんな家があったか、どんな景観だったかなんてのは、そこに住んでいた人たちでさえすぐに忘れてしまう。 私は、趣味でギターを弾いている。私の持っているギターはマーチンという会社のギターであるが、ギターは新しいギターだけでなく、オールドと呼ばれる古いギターが高値で取り引きされている。古いギターは良い材料を使って希少価値のある物もあるが、それより、古いギターの良さは長年弾き込まれボディーが枯れて、素晴らしい音色を持っているからである。 私のギターも傷だらけで古色蒼然(そうぜん)であるが、新しいギターでは出せない素晴らしい音を持っている。オールドギターは時代にとり残された物だが、それが逆に古くなることで音質面などで価値が高くなっている。建物はギターとは比べられないが、建物も大事に再生すれば十分活用できる。面倒見ながら再生すれば、現代建築の持てない魅力を持つ建築物になるはずである。 歴史的建造物に興味を持ち、そしてその価値を分かってもらいたいのは若い人たちである。頭は茶髪で、だぶだぶの服に、穴のあいたリーバイス(耳にピアスでも付いていればなおOK)。歴史的建造物は三つぞろいのスーツや、制服など窮屈な物は着ていない。もっと楽しめる物のはずだ。N・G・D・Bの『アンクルチャーリーと愛犬テテイ』を聴きながらそう思った。もっと肩の力を抜いて、気楽に歴史的建造物と町の歴史を楽しみましょう。 高崎駅前の豊田屋旅館は本館のみであるが、解体されず生きながらえた。これは一級の歴史的建造物である豊田屋旅館を守ろうとした大勢の人たちの力があったからである。歴史的建造物を再生活用して残しましょう。同じ駅前の「井上邸」も今現在行く末は不明である。皆さん、何か良い知恵を貸してください。 (上毛新聞 2002年1月9日掲載) |