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◎猿ケ京温泉 私の住んでいる新治村は、県の北端に位置し、北に新潟県、東に水上町と月夜野町、西から南は吾妻郡に接しています。その中で猿ケ京は、湧出(ゆうしゅつ)量が豊富な温泉と、釣りやボート遊びでにぎわう赤谷湖を有する観光地です。 十年ほど前に、村が県に先がけて景観条例を作ることになり、審議委員のメンバーとして私はドイツのゼーバッハという人口千五百人ほどの小さな町へ研修に行きました。そこはヨーロッパの美しい町づくりでグランプリを取った町です。そこでの整備された緑と家々を飾る花の彩りとの調和は、私の心を強く打ちました。そして、猿ケ京も花と緑でいっぱいにし、訪れてくれる人々に少しでも和んで頂きたいと強く思いました。 まず最初にしたことは、仲間三人で自宅を花で飾ることでした。二階のベランダにはゼラニウム、庭にベゴニアやサルビア、マリーゴールド、芝桜などを植えてみました。すると観光客の方々は写真を撮ったり、お誉めの言葉をかけてくれたりしました。 この花飾りは、隣近所の土産物店や食堂、旅館などにも広がり、通りが花であふれ出しました。そこで猿ケ京全体を花で飾るために「猿ケ京花と緑の町づくりネットワーク」という団体をつくりました。最初は十人足らずのメンバーでしたが、商工会青年部や女性部、観光協会青年部などに呼びかけ、現在では五十人を超える団体となりました。 「自分たちのできることから始めよう」を合言葉に始めましたが、花植えによる共同作業の楽しさやそう快感、そして見事に咲きそろった時の充実感などを得ながら、この団体のきずなが段々と強くなっていくのが分かりました。 猿ケ京区の行政に働きかけ、毎年五月の第四日曜日を「猿ケ京花のフェスタの日」と定め、区民総出の花植えの日を設けるまでになりました。そのかいあってか、猿ケ京のどの通りも花が咲き、花コンクールで県グランプリ、全国でも賞を頂きました。メンバーたちはこういう「小さなことから村おこし、町おこしは始まる」という実感を持ったのではないでしょうか。 現在、猿ケ京花と緑の町づくりネットワークは、ただ花を植えるだけでなく、村おこしのために行政などにもかかわっていく団体へ進んでいこうと、「猿ケ京ネットワーク」と名称を変え、区の行政会議や活性化委員会のワークショップなどにも参加し、青年としての意見をぶつけています。 花と緑であふれ、ゆとりと活力のある町となり、ここに住む青少年が「出身は猿ケ京」と胸を張って言える町づくりをしていきたいと考えています。 本県は「観光県ぐんま」をうたっています。ですから皆さん一軒一軒の家も庭も、県の景観の一部です。花と緑を飾ってみてはいかがですか。 (上毛新聞 2002年1月6日掲載) |