視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
吾妻郡東村長 
唐澤 保八郎
さん(吾妻・東村五町田)

【略歴】高崎短大卒。昭和29年より37年間、吾妻郡内の幼稚園、小・中学校の教育職員を務める。平成11年4月より東村長に就任。現在1期3年目。


住民参加を本気で模索

◎小規模自治体

 「行政は住民のためにある」。まさに至言であり、行政のすべてがここから実践に移される。が、ここで一歩立ち止まって「住民のため」について考えてみたい。

 住民のニーズのもとに、一から十まですべてを行政がやることが果たして真の行政といえるか、ということである。言葉は悪いかもしれないが、もし住民に他力本願的な意識があるとするならば、それは従来の行政がそのような方向にもっていってしまった、積年の弊害とも言えるでありましょう。

 活力ある村、明るく元気ある村などのキャッチフレーズをもって代表される、成熟した地域社会の醸成には、行政と住民がもっと義務と責任を共有するという根本的な心的変革に両者がじっくりと話し合い、時間はかかっても共通理解にこぎ着ける行政手法が最も大事なように思われる。

 世に言う借金大国になってしまった現状を、健全財政の方向に是正しなければならないことは、目下の急務であることは万人の是認するところである。

 いま国は、それがための施策として「地方交付税の削減」「道路特定財源の一般財源化」を筆頭に、聖域なき構造改革、骨太方針の名のもと、大小さまざまな自治体の現実の姿を見極めることなく、しゃにむに数字合わせのみに走っていないか。

 借金大国になったことへの連帯責任ともいうべきものは、どんな小さな自治体といえども負う覚悟はある。また、なければ健全化の道は開けないことも承知している。しかし、それがあまりにも性急であるならば、「自立し得る自治体」「個性ある自治体」の基盤が築かれないうちに、自治体の活力は消沈してしまうでありましょう。

 いま、私たち小規模自治体は衆知を集め、これからの自治体はどうあるべきか、「小さな行政」を柱に住民参加の仕組みを本気になって模索している最中である。「おれたちの村はおれたちの手で」の住民意識の変革を、試行錯誤を繰り返しながら実践に移しているところである。そして、その手ごたえを随所に見いだしているところでもある。

 まだまだ人情味豊かで義理堅い地域社会に、世界の流れともいうべき行政と住民のパートナーシップで、より強固なきずなの太さを求め、数字的な評価でなしに、質的な行政評価を重視しながら、牛歩であっても一歩一歩前進する自治体でありたい。

 それには、当分の間、人口密度のみに目を向けた都市型財政(これが一極集中の弊害をもたらしたことは既に証明ずみ)に再び向くことなく、山村過疎と言われる小規模自治体の、より人間的にして連帯感あふれる地域社会を再認識し、一律的な構造改革をもって、地方切り捨て的な施策は厳に慎むべきではないか。

 現今の社会情勢を契機ともとらえ、成熟せる自治体の醸成に向かって真剣にとり組んでいる。発展途上ともいえる地方自治体への価値観こそ、わが国のさらなる発展の礎と考えるが、いかが。

(上毛新聞 2001年12月4日掲載)