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◎童謡「みょうぎさん」 妙義山は、四季折々の景観が美しいことで、古くから文人や画家の創作対象となることが多かった。戦前まで、文部省唱歌にも取り上げられ、「蛾蛾(がが)たる巌(いわお)連なりて」の歌いだしで知られる『妙義山』が、全国津々浦々で歌われていた。 郷土に縁のある歌があることはうれしい。ましてや、その歌が広く知られているなら、なおさらうれしい。もしかしたらと、そんな期待をもたせる歌が、過日の国民文化祭において新しく生まれた。作詩・角由加里(東京都墨田区小梅小三年)作曲・鈴木理勢(静岡県浜北市北浜南小三年)、補作曲・湯山昭(作曲家・日本童謡協会会長)の『みょうぎさん』である。 十一月十一日、かぶら文化ホールで行われた第十六回国民文化祭・ぐんま二〇〇一「童謡の祭典」において初演された。富岡小の六年生全員が歌い、佐々木弘子同校教諭による歌唱指導のあと、ソプラノ歌手・大塚亜希子さんの歌とピアニスト・稲辺直美さんの伴奏でみごとに歌い上げられた。 富岡市では、童謡詩人・橋本暮村(一九○七―三二年)を顕彰して、昭和六十三年から毎年「かぶらの里童謡祭」を開催している。その中の一事業として、公募による童謡づくりを行っている。平成二年から始めて、今回で六曲を生み出すことになる。 前年度の作詩において大賞を受賞した『みょうぎさん』に付曲することで、全国公募となった。応募者数三百四十四人(うち子供十四人)の作品が寄せられた。湯山氏を審査委員長とし、私もその一員とさせていただき、計六人の審査員による審査の結果、小学三年の鈴木さんの作品が大賞(文部大臣賞)に選ばれた。 歌詞は「はるはピンクのかみかざり…」と始まる。作詞の角さんは、小学二年まで富岡市に住んでいた。両親に連れられて、春に「さくらの里」を訪れたとき、妙義山を背景に満開になった桜の花が、当時二年生だった角さんの心に、髪飾りのように映ったようだ。 歌詞は四番まであり、春夏秋冬の妙義山を自分の友達のように詩に表している。歌詞の最後は、「かがやいて かがやいて みょうぎさん」となっているが、角さんは自分自身に、また自分の友達に、いつもそう言って励ましているのであろう。子どもの澄んだ心の目で、さわやかに、かわいらしく、やさしい言葉で表現している。 この歌詞にぴったりのメロディーが、三年生の鈴木さんの作品であった。鈴木さん本人は、作曲したときの感想を「詩がよかったのでかんたんでした」と言っている。いきいきとした個性的なメロディーである。感じたままが音になって、心の中からわき上がってきたのだろう。 湯山氏から私への手紙の中に、補作・編曲等にかかわって、「単純なものを完全な形で残すには、細心の注意とエネルギーがいることを、今度のことであらためて教えられた気がします」と記している。私も下手ながら作曲・編曲をしているが、この言葉にも強く心を打たれた。 (上毛新聞 2001年12月2日掲載) |