視点 オピニオン21
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道又秀夫
さん(高崎市柴崎町)

【略歴】日本医科大卒。群馬大第一内科に入局後、伊勢崎市民病院、前橋赤十字病院などに勤務。98年1月、国立がんセンター出身の妻、かおるさんとともに開業。アレルギー科・呼吸器科専門医。


病診連携のシステムを

◎医療費と医者の選択

 医療費の増加と保険組合の赤字について、小泉内閣で論議され、老人も含め自己負担率三割との試案も出されております。赤字の原因として、老人医療費の増加が挙げられていますが、果たして老人医療費だけで医療費が上昇しているのでしょうか。

 医療は日進月歩で、医療水準が上がれば医療費は自然に上昇するものであります。その進歩に反して、医療費を抑えるために必要な検査も制限していくのが、患者のためになるのでしょうか。医療の効率化こそが医療費を抑制し、かつ高度医療を行っていく道だと思われます。

 現在のように国民皆保険で、だれでもどの医療機関でも受診できる体制は、素晴らしいものであることは間違いありません。しかし、財政的な問題で医療費の抑制が必須のものであるとすると、受診の効率を上げる、すなわち一つの病気で複数の医療機関を受診することなく、最初から的確な医療機関を受診できるようにする必要があります。

 ところが、医療法では、医師免許があれば専門でない診療科目も表示できるが、学会で認定した専門医の表示は、看板広告することはできない―とするような、患者側にとって不利な状況となっております。専門医でなくとも専門科の表示ができることから、専門でない診療科目を挙げている医療機関も数多くあります。

 患者側からすると、最も有用な情報が開示されていない現状では、数件の専門でない医療機関を“はしご”して受診し、医療費を無駄にするのは仕方がないことであります。医療技術、診断技術の進歩により、診療分野は細分化され、病院は当然でありますが(専門医のいない病院も数多くありますが)、われわれ開業医においてもかなり細分化されています。

 一般に内科専門といっても、実はその中にさらに専門があり、当院で言えば私は、内科でアレルギー、呼吸器の専門医、私と一緒に診療している妻は内科専門医でありますが、消化器、内視鏡、呼吸器、癌(がん)の専門医であります。

 医者の専門領域はかなり狭いもので、専門医でなければ、病気の種類によっては現在の標準的な医療を受けられないことが多く、医療費の無駄につながることが考えられます。

 専門化しているということは、診療所単独での医療には限界があり、自院で管理できない病気や入院など専門病院での診療が必要な場合、どの病院のどの医師に紹介するのが適切かを知らないと、診療所のもう一つの役割が果たせません。つまり、診療所は専門性をもった医療分野を持つことと同時に、医療情報をしっかり把握した紹介提携病院を持たなければならないと考えられます。

 当院では、がんではセカンドオピニオンも含め国立がんセンターへの直接紹介を行っております。また、前橋赤十字病院登録医となっており、その他の病気の紹介体制を確立しております。

 このような専門医療体制、病診連携システムを構築することが、医療資源の効率的利用を推進する一つの手段ではないかと考えられます。

(上毛新聞 2001年12月1日掲載)