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◎高崎・観音山 平成十二年春のことです。満開の桜とライトアップされた観音様を見に、久しぶりに訪れた私は、「春は観音山に限るなぁ」と思いながら車から降りて驚きました。夜桜を楽しむ家族連れやカップルのにぎやかさと対照的な薄暗い周囲の商店街。月一回行っている「高崎のまちづくりを考える会」での勉強会終了後、だれからともなく「夜桜を見にゆこう!」ということで、空腹のまま観音山に繰り出したのです。 湯気のたったおでん、甘酒、お団子…。店の人との活気あるやりとりと温かい食物を期待していた私たちは、戸閉めになった店を見てガーンと頭をなぐられた思いでした。ただ一店、アイスクリーム屋があるのみ。春の観音山が、寂しくなっているのをしみじみ感じました。 「これだけ人がにぎわう桜の季節に、どうして? 何か変よね」と、帰路温かい食事をしながら、全員口をそろえて言いました。私たちの会では、三年前から「観音山を考える」を学習のテーマの一つに取りあげています。この一件を機に、観音山への思いが一気に膨れ上がりました。何か行動をおこさなければという使命感を感じ、観音山周辺の調査を続けてきました。 そしてその延長線上に、とうとう「観音布らく楽市」へと発展させたのです。平成十三年十月六、七の二日間観音様の下、慈眼院境内で行われたこの布らく楽市は、単なるフリーマーケットでなく、糸と布の手仕事に携わった群馬の女性史を背景にしています。布をいとしむ女性の物づくりの知恵と工夫を大切に、糸を紡ぐように次世代の女性に語りついでいく、そんな交流の場になることを願い、企画運営しました。結果はたくさんの人々が喜び、大成功を納めました。 また、行政・民間の協力が絶対必要条件だ、ということも再認識しました。私たちの会は発足して四年。多くを学び、しなやかに成長しています。 さて観音山は白衣観音・清水寺・高崎市染料植物園・山田かまち美術館・少林山・ファミリーパーク(仮称、平成十五年一部開園)と施設が整っていますが、現在はすべて点としての機能しか果たしておりません。 私たちの会では“布らく楽市”を中心基軸に面としての観音山を考え、こうあってほしいという市民の願いを受けとめています。例えばいやしと健康の森や、手軽に非日常空間を味わえるコトづくりを企画中です。これからは観音山丘陵を愛する仲間を増やし、交流と情報交換、意見交換を交わしながら進めていきます。 その方法の一つに現在、『観音山にあったらいいなマップ』を制作中です。ほっとする休憩所、甘味喫茶、花屋、おしゃれなカフェ、観音山だけしかない店、雑貨の店などをが載っています。 私はこの会のメンバーと共に、市民生活に密着したコアとしての観音山、糸・布をキーワードに、文化・歴史を発信するグローバルな観音山をつくりあげていきたいと考えています。 (上毛新聞 2001年11月29日掲載) |