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◎スクールカウンセラー ここ数年、教育現場において、「こころの教育」が注目されるようになってきた。日常生活の中でも「カウンセラー」という言葉が、珍しくなくなっている。そして最近では、学校にスクールカウンセラーがいるということも、生徒・保護者や教師にとって、自然なこととして受け入れられるような時代になりつつある。 かつて、都会の一部の私立中学や高校には、専任のカウンセラーを在籍させているところもあったようだ。しかし、公立の学校にカウンセラーを置くということは、これまでほとんど前例がなかったと言ってよい。 そうした意味で、平成七年度から始まった、文部省の「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」は画期的な試みであった。当時は、急増するいじめや不登校生徒の対応策として、公立の小、中、高校にスクールカウンセラーを、試行的に配置するというものであった。受け入れ先の学校では、カウンセラーが週一、二回学校に勤務することで、期待もある半面、果たしてどのような仕事ができるのか、半信半疑であったと思われる。しかし、本県の初年度の派遣校は三校であったものが、二年目には十校、三年目には十五校と、予想を上回る規模で毎年拡充が続き、六年目には二十四校となり、平成十二年度をもってこの試行事業は一区切りとなった。引き続き文部科学省は、学校場面におけるカウンセラー配置の有効性を認め、十三年度から五年間で、三学級以上のすべての公立中学にスクールカウンセラーを配置していくという、新たな展開をうち出している。 私自身は、この事業に五年間、公立高校と中学のスクールカウンセラーとしてかかわってきた。振り返って見ると、スクールカウンセラーの導入が初めからスムーズにいったわけではない。文部省の方針ではスクールカウンセラーには原則として「臨床心理士」をあてるという条件があったが、当時、臨床心理士という資格は今ほど社会に浸透していなかった。さらに、学校現場を知らない者に、どんな仕事ができるのかと懸念する声も聞かれた。 しかし、実際にスクールカウンセラーとしてかかわってきた中で考えてみると、異質な視点を持つ者が、学校現場に入るということに意味があったと思っている。子供に対しても中立的な立場が取りやすかった。 日本ではまだ一般的ではないが、コンサルテーションという言葉がある。異なる立場にあるものが、お互いの専門性を尊重しながら、共通の目的のために、意見を出し合うことである。この事業においても、教員とカウンセラーが、それぞれの視点から「子供が育つための話し合い」を重ねていくことによって、子供を多面的に理解し、少しでも学校を活性化させていくことにつながっていければ、と願っている。 (上毛新聞 2001年11月17日掲載) |